第14話戦いを終えて


 目を開けると、またぼんやりとした灯りが見える。眩しくて目が開けていられない。


「研!」


 母さんの声だ。前と同じだな。


「目が覚めたか。研」


 父さんの声。また泣きそうになってるな。母さんより涙脆いから。


「研君!」


 え? 誰?


 思わず顔を声の方を見つめると、ぼんやりとしたシルエット。長い黒髪は綺麗なストレート。ストレートの女性は…


「舞ちゃん?」

「うん!」


 段々と視界がハッキリとしてくる。本当に舞ちゃんがいた。そしてそばには…ライオン?


「でっかいライオンだね」

「そばを離れてくれなくて」


 困った顔になる舞ちゃん。それより困ってるのは病院だろうな。それにしてもこれは魔物の図鑑で見たことがある。【聖獣】ネメアだ。勿論敵であるが、古の怪物に似ていることから【聖獣】と言われる。敵として遭遇すれば普通に倒すのだけど。


 しかし完全に従えている。可能性を考えるならモンスターストーンだ。でも【聖獣】なんて魔物を封じたモンスターストーンなんて、とんでもない額だ。お金持ちすぎる月野家だから可能だったのだろう。


「研君、目が覚めたならすぐに退院できそうだね。傷は塞がってるし。あ、あとね。仮免も合格だって、おめでとう!」

「そうか、仮免…ありがとう。でもよく覚えていないんだ。エルフはどうなったの?」


 舞ちゃんは姉ちゃんや冷児、萌香が救出に向かってくれたこと。舞ちゃんも拒んでいたモンスターストーンまで使って助けてくれたことを教えてくれた。


「みんなにお礼を言わなきゃ」

「みんなやりたくてやったことだから」

「それでもね」


 舞ちゃんと微笑みあっていると、母親が喉を鳴らして雰囲気を壊しにかかる。ませてんじゃねーよということかな。


「研、あんた特別に仮免は受かったんだ。次は期末試験だよ。また2週間くらい寝てたんだ。しっかりやるんだよ」


 母さんに釘を刺される。


「その件は心配ありません。私がつきっきりで」

「いけません!」


 母が教えるのを阻止。ませてんじゃねーよということなんだろうね。また冷児に教えてもらおうっと。


 俺の目覚めで、医者などが念の為に検査したいという事で、今日は両親も舞ちゃんも帰ることになった。


__


 検査も一通り終わり、気になっていたことを確認する。


「ステータス」


名前:目許研

種族:人間

Lv:30/100

HP:245/245

MP:245/245

攻撃力:155

防御力:155

俊敏:300

器用:155

運:30


SP:20


ギフト一覧 

上級剣士:Lv1 ⭐︎⭐︎

暗視双眼鏡の目:Lv1 ⭐︎⭐︎

予感:Lv1 ⭐︎⭐︎

攻撃力強化:Lv1 ⭐︎

俊敏強化:Lv10 ⭐︎

器用強化:Lv1 ⭐︎


「レベル30!? こんなに上がったのか! エルフ戦があったからか?」


 ど、どうしよう。どう振ろうか。1つは抗えない。幼い心では打ち勝てない響き。【剣聖】の名。なってみたい。誰もが思うものに手が届く。


名前:目許研

種族:人間

Lv:30/100

HP:245/245

MP:245/245

攻撃力:155

防御力:155

俊敏:300

器用:155

運:30


SP:10


ギフト一覧 

剣聖:Lv1 ⭐︎⭐︎⭐︎

暗視双眼鏡の目:Lv1 ⭐︎⭐︎

予感:Lv1 ⭐︎⭐︎

攻撃力強化:Lv1 ⭐︎

俊敏強化:Lv10 ⭐︎

器用強化:Lv1 ⭐︎


 ふあー! やってもうた! でも剣聖ってかっけぇ! テンション上がるー!


 病人が1人。ベットの上ではしゃぎ狂う。


「ふぅ。落ち着いた。あとは姉ちゃんいう通り。能力を伸ばしていく方向でっと」


名前:目許研

種族:人間

Lv:30/100

HP:245/245

MP:245/245

攻撃力:155

防御力:155

俊敏:300

器用:155

運:30


SP:0


ギフト一覧 

剣聖:Lv1 ⭐︎⭐︎⭐︎

梟の目:Lv1 ⭐︎⭐︎⭐︎

予感:Lv1 ⭐︎⭐︎

攻撃力強化:Lv1 ⭐︎

俊敏強化:Lv10 ⭐︎

器用強化:Lv1 ⭐︎


 おお、フクロウの目か。見える視野が全然違うな。レベルアップした能力ギフトは基本的に下位の能力ギフトの能力も内包している。なので、暗視や双眼鏡の力もある。ますます便利な目になった訳だ。


「これでもまだまだエルフにボコボコにされるレベルだろうな。あいつをいつか1人で倒す。戦争なんてもう起こさせない。やれる範囲で…」


 平凡に生きる。それなりの成功の基本スタイルは崩せない。子供の頃から培ってしまったものだ。その中でやれることを模索しよう。そうすれば視野も広がるかもしれない。


 世界は思ってるよりも広い。それは今回の件で、嫌というほど味わった。ゆっくり行こう。嫌でも色々なことを知る日が来てしまうまで。


__


「退院おめでとう!」


 両親に冷児、萌香。舞ちゃん、一ノ瀬さん、迅君が集まってくれた。


「みんなありがとう。命があったのは、姉ちゃんや友達みんなのおかげだ。感謝してもしきれないよ」

「恥ずかしいこといってんぞ!」


 冷児が茶化し、みんなが笑う。戻って来れた。改めて実感する。姉ちゃんからも連絡があった。


「大丈夫?」

「大丈夫だよ。姉ちゃん、ありがとう」

「気にしなくていいよ。元気そうで何より。じゃ」


 あっという間に切られる。姉ちゃんは今回のエルフ討伐が貢献として認められて、予定よりも早くA級探索者となった。ギルドもより忙しくなっているらしい。ますます会えなくなるなと寂しくなった。


「研君」


 舞ちゃんが話しかけてくる。みんなでどんちゃん騒ぎ。今日ばかりは両親も許してくれている。冷児も萌香も、そして迅君も大騒ぎが好きだ。それを楽しげに見ている一ノ瀬さん。


「どうしたの?」

「レベル…上がってた?」

「バッチリさ」


 俺は親指を立てて、返事をする。


「私も30になってた」


 舞ちゃんも俺と同じくらい経験値が入ったんだ。


「でも薫ちゃんと迅君は上がってなかったの」

「え? 何で?」

「その場にはいたけど、戦闘不参加と見なされたみたい」


 舞ちゃんは少し申し訳なさそうに一ノ瀬さん達を見る。


「鳴子さんとネメアがあっという間に終わらせたから」

「それなら俺達が手伝ってあげなきゃ。弱いまんまじゃこの先一緒にやっていけない。もう大切な仲間なんだ。あいつらはさ」


 舞ちゃんは俺の方を見て、頷く。


「一緒にいてくれる?」

「もちろん。ただたまにはネメアが見てないところも作りたいね。勿論みんなでいる時にさ」


 緊張するんだよなぁ。あの瞳。強すぎる。


「そうだね! 勉強してみる!」

「うん」

「おい! 主役! こっち来い!」


 冷児に呼ばれ、馬鹿騒ぎの輪の中に入る。今はとにかく友のありがたみを存分に味わった。

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