第12話救出③
この世界のダンジョンから始めて這いずり出てきた魔物がエルフだった。大量の知的生命体は人類が接触を試みる前に、人類に襲いかかった。更にダンジョンから竜または龍が飛び出し、そして魔族と呼ばれる魔物が飛び出し、まさに人類を蹂躙した。
更にダンジョンからは様々な知性を持たぬ魔物も這い出して来た。
たったの1週間で人類の半分以上が地上から姿を消し、国も滅んだ。残り半分は女神の恩恵により対抗し、力を積んだ。そして長引いた戦争の中まとめ役の圧倒的な力を持つ
エルフは魔物側のリーダーで激しく人類と対立。エルフの中でもハイエルフと呼ばれる者はSSS判定を受けている化け物。ただ数が少なかった為に、抑え込むことができたと言われる。
エルフは風の力をよく用いた為に、
__
か、勝てるわけがない。俺の全力でも簡単に弾き飛ばされたんだ。MP全て捧げてのステータスで飛ばされたんだ。
「どう逃げるか考えてるのかい?」
痛いところを突かれる。しかし何だろうか。俺は戦争の頃、常に両親やすでに力に目覚めていた姉の影に隠れ、普通の魔物もろくに見たことがない。なのにエルフを見ていると無性に腹が立つ。殺意を抑えられない。遺伝子レベルで刻み込まれた憎しみか。
「戦闘中にボーッとするのは良くないな」
突然見えない風の壁にぶち当たり、ダンジョンの壁に押しつけられる。あまりの痛みに声が出る。
「くそ!」
エルフは楽しそうに俺を見ている。
「人間の叫び声っていいよねぇ。ゾクゾクする」
「お前らゴミだ! 人類がお前らの存在を許さないぞ!」
「また数が揃ったら暴れるさ」
エルフは楽しそうに長剣を腹にゆっくりと刺してゆく。再びの痛みに悶絶し、声を上げる。ダンジョンに響く。そんな地獄の時間が続く。
「反応が薄くなったな。そろそろ死ぬかい?」
「く…くたばれ…」
エルフは俺の言葉に嬉しそうだ。長剣を振り下ろす。
迸る紫の閃光が長剣を弾き飛ばす。エルフは楽しみを邪魔され、不機嫌になる。
続いて赤い閃光がエルフに近づくと炎を浴びせる。エルフは風の力で炎を振り払うが、紫の閃光も殺しかけていた少年の姿もなかった。
「追いかけっこか。嫌いじゃないね」
エルフは風に乗り、追撃を開始する。
__
「鳴子さん!」
萌香が叫ぶ。
「黙って走りな!」
鳴子が叫ぶ。走りながら弟の状況を確認する。傷だらけ。崖からの傷とあのエルフから受けた傷でだいぶ弱ってる。長くは持たないわね。
鳴子は持ってきていた回復薬を無理矢理飲ますが、HPの回復は鈍いはず。シンプルに血を流しすぎている。恩恵がなければ崖から落ちた衝撃で死んでいたはず。
「冷児!」
「はい!」
後ろから凍らせた地面に乗り、高速でついてくる冷児。
「私達の通った道を氷の壁で覆えるかい?」
「やれます!」
「作れるところに全部作れ!」
「はい!」
冷児が授かりし、【低温】の
冷児もその父の背中を見て育ち、父親の力を受け継いだ。まだまだ成長段階だが萌香と共に、ひっそりとダンジョンに潜り、スケール2を2人で攻略するという猛者っぷり。
冷児は次々と氷の壁を作り、道を塞いでいく。だが冷児の作れる氷の壁は薄くモロい。未熟な物。冷児は己の不甲斐なさを感じる。
「畜生!」
「悔しがってる場合じゃないよ!」
萌香の身体が燃え上がる。授かるのは【炎】の
萌香は冷児が氷の壁を作るたびに、前面に出て、エルフに備える。
その間に鳴子は出口を探る。弟を助ける為と予想外のエルフという強敵に鳴子は判断を間違えていた。逃げる方向である。逆に走れば、崖の穴に戻れた。そこからなら出口は分かっている。引き返すことはエルフとの激突を意味する。
エルフは最低ランクでもA判定。1人で戦っても勝てるかどうかの相手。今は手負いの弟と未熟な2人のメンバーだ。どうするか。
氷の割れる音が近づいてくる。
「早いな。クソッタレめ!」
鳴子が紫電を発動。
「冷児! 萌香! 命令だ! 研を担いで出口を探しな!」
「それは!」
萌香が鳴子の方を振り返ると同時に冷児の最後の氷が割れ、まず冷児が吹き飛び、すぐさま萌香もエルフの凄まじい力で首を掴まれる。
「うぐ! やって下さい! 鳴子さん!」
「勇ましいね。でも人間は甘いから」
余裕のエルフに雷撃が襲う。たまらずに萌香を離すエルフ。
「動けるか。萌香?」
「へ、平気です」
萌香は電撃により震える手で回復薬を飲む。
「早い。素晴らしい動きだ」
エルフは微笑む。舌舐めずりする。
「品がないね。最低ランクか」
「それがどうした?」
「いや。ラッキーだなってね!」
鳴子は2本の短剣を抜き出すと紫電に包まれる。
「冷児! 萌香! 動け!」
鳴子とエルフが激突する。爆風がダンジョンを走る。
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