第11話救出②


「は!」


 クリスタルの剣でゴブリンを切り捨てる。真っ暗のダンジョン内でも明るく見える。暗視の力で辺りに見えないものは無い。さらにはこのダンジョンはスケール1だ。さっきから襲って来るのはゴブリンやスライムばかり。出口は近いかもしれない。


 能力ギフトの予感の力で何となくを頼りに進んでいるが、分かれ道になると、身体がピクピクとどちらに行けば良いのか教えてくれる。


 更に感じる。やばい何か。ここにはいる。会っちゃいけないものが。とにかくそれを避ける。回復薬も見つけなくちゃ。スケール1でも普通なら攻略には2週間はかかる。それはどれだけレベルを上げても変わらない。単純に広いから、時間がかかるのだ。姉の力でも初級の探索者でも、かかる時間は1日程度しか変わらない。


 息を整え、先に進む。落下からどのくらい時間が経ったろうか。落ちた衝撃で時計も壊れた。装備していた鎧も砕けた。あるのは剣のみ。でも今の俺は結構強い。


 ピクリと予感がする。


 剣を振り抜く。スライムがスパッと斬られ、溶け落ちていく。


 こんな敵もう相手じゃない。だが突然膝が崩れ落ちる。


「ステータス」


名前:目許研

種族:人間

Lv:11/100

HP:4/150

MP:150/150

攻撃力:60

防御力:60

俊敏:110

器用:60

運:11


SP:1


ギフト一覧 

上級剣士:Lv1 ⭐︎⭐︎

暗視双眼鏡の目:Lv1 ⭐︎⭐︎

予感:Lv1 ⭐︎⭐︎

攻撃力強化:Lv1 ⭐︎

俊敏強化:Lv10 ⭐︎

器用強化:Lv1 ⭐︎


 やはり自然に減っている。動けるのはあとどのくらいだろう。自分から流れる血を見て感じる予感。


「気付かれる。餌が近いと」


 俺は後ろ振り向く。何かが近づいている予感がした。


__


 紫の閃光が凄まじい速さで崖付近に到着。後ろから赤い閃光と青い閃光も到着。


「ここまでは着いてこれた?」

「「問題ありません」」


 2人はパーティのリーダーに忠実に返事をする。友を救うために、いちいち問題は起こしたくない。


 普段は仲良しのお姉さんでも今は違う。そういった割り切りもきちんと出来る。非常に優秀な幼馴染達だった。


「さて。何が出るか」


 穴が予想よりも大きいわね。Bは最低予想。それ以上であるならば、選択肢は逃げるのみ。弟1人抱えて逃げるくらいは余裕だけど、2人もいる。様子を見ながら、早い段階でどこかで待機させる。


 鳴子は穴へと飛び込み、萌香と冷児も続いた。


__


 月野はダンジョン前から離れなかった。どうしても中に入り、友を助けに行きたかった。初めての友達。失いたくない。


「どうにもならないよ」


 一ノ瀬が月野の肩に手を置く。


「方法があるの」


 月野は一ノ瀬に赤く光る宝石を見せる。


「それって…モンスターストーン?」


 モンスターストーンとはダンジョンより掘り出された魔物を封印できる宝石のこと。空のものと中にすでに魔物が封印されている物の2種類が存在する。


 封印は魔物にとっては苦痛らしく、それから解放してくれた者に忠誠を誓い、死ぬまで尽くすという。稀に主人以外にも主人の子供などにもなつき、継承される場合がある。


「うん。パパからの贈り物」

「流石お金持ち。何で使わなかったの?」


 一ノ瀬が尋ねる。


「卑怯かなって。私は独立したくて我儘を言って学校に入ったの。でもいつもそばには護衛。自転車通学の約束が車のお出迎え。どんどんパパのいいなり。せめて探索者くらい1人でやってみせたかった」


 月野は赤い宝石を見つめる。


「横から失礼。俺なら喜んで親の力を使うさ。さんざ使ってやって逃げ出すね。それに探索者舐めんなよ。年間どれだけ死んでると思ってる。使えるもんは使え。先人の教えだぜ」


 迅の言葉に頷く月野。赤い宝石を割る。


「【聖獣】黄金の獅子ネメア。力を貸して」


 月野、一ノ瀬、綱紀が神々しい【聖獣】の姿を見つめる。黄金の獅子は体長は5mを超える。魔物のランクはS判定。この先の探索者人生で大成すれば、対峙するのは当たり前の存在だが、今はまだ途方もない化け物。そして何より頼れる存在。


「私たちを連れて行って。ネメア」


 黄金の獅子は3人を背中に乗せると、ダンジョンへと飛び込み、瞬く間に先に進んだ3人に迫っていった。


__


 お? 緑色に光るガラスを発見。


「やっぱり回復薬だ。ありがたい」


 何でこんな物が自然に落ちてるのかとか、この際気にしないで行こう。俺は回復薬をガブ飲みする。血が止まり、痛みが消えていく。


「ステータス」


名前:目許研

種族:人間

Lv:11/100

HP:103/150

MP:150/150

攻撃力:60

防御力:60

俊敏:110

器用:60

運:11


SP:1


ギフト一覧 

上級剣士:Lv1 ⭐︎⭐︎

暗視双眼鏡の目:Lv1 ⭐︎⭐︎

予感:Lv1 ⭐︎⭐︎

攻撃力強化:Lv1 ⭐︎

俊敏強化:Lv10 ⭐︎

器用強化:Lv1 ⭐︎


 よっしゃ。これで暫くは耐えられる。初心者の油断。助かったと思う心を緩みが、巨大な存在の接近を加速させる。獲物が油断するのを待っていた。


 頭上に感じる。凄まじい敵意。避けられない。


紋章の刺青エンブレムタトゥー!」


 上級剣士による紋章の刺青エンブレムタトゥーは捧げた魔力の2倍の力が付与される。中級剣士の2倍の力。その反応速度を以っても、俺は何かに吹き飛ばされる。


「死ななかったか。驚きだね」


 金髪のサラサラヘヤー。長い耳。金の飾りと質素な衣服。腰には長剣を差している。2mを超える身長。痩せぎすな身体。指にもいくつも指輪がついている。


「嘘だ。戦争で滅んだはずだろ?」

「我々も魔物だ。滅ぶってことはない。魔物の集合体でたまたま生まれたキメラだ。弱いよ。君らでいうとA判定くらいかな。退屈なところだったから、強い人間が来そうなところに移動しようと思っていたんだ。少し付き合ってよ」


 エルフが微笑み、剣を抜く。ありえない敵に呆然とするしかなかった。

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