第7話仮想ダンジョン②
俺たち即席パーティは用意された階段を下りる。階層は深くなく。広さもない。1時間程度で終わる実習だ。他のパーティちらほら見つけられるし、ホログラム相手に連携を見せているチームもある。
「このくらいなら余裕ですね!」
舞ちゃんはいつも元気満々。しかし敷地内にこんな施設を作るとは、天明とは凄い学校だ。
「おい! ホブゴブリンだ!」
迅君が叫ぶ。
「月野さん! 前に出て、盾で防御!」
「はい!」
舞ちゃんが盾を展開。その瞬間俺の目の前の光景がブレる。舞ちゃんの盾に翼が見えた。翼のある盾は大天使の盾という最高峰の星5の力。そんな訳はない。しかも翼は2枚ではなく4枚見えた。
俺の脳裏に浮かぶ言葉。
「私に来なさい!」
舞ちゃんはさらに挑発を行い、前衛としての仕事をこなす。俺はクリスタルを剣へと展開。走り出して、ホブゴブリンの首を切り落とす。
「研君。ナイス!」
舞ちゃんとハイタッチ。ホログラムのホブゴブリンは倒れると砕け散って消えた。
「どんどん進もう!」
__
場違いな実力を持つ俺たちパーティは最後の下層に一番乗りした。ホログラムのクリスタルタワーを砕けばミッションクリアだ。
突然爆発音が響く。どこからの音か分からなかった。水蒸気が広間を満たす。
「何だ?」
「あの、これは。モンスターストーンを破壊した時と似てます」
一ノ瀬さんがオドオドしながら教えてくれる。
「実際のモンスターか。戦わなくても良いんだよね」
「そうなってるけど、あれ」
舞ちゃんが指差す先に魔物が立つ。その先にはクリスタルタワー。標的の前に魔物が現れた訳だ。
「しかもありゃ…オークナイト」
騎士の鎧に身を包むオークがこちらを見つめている。体長は3mほど。装備は大剣だろうが普通の剣に見えるのが不思議だ。
「オークナイト。E判定のモンスターだ。何でそんな強い魔物がいるんだよ。普通はGだろ!」
E判定なんて初級ダンジョンの階層主レベルだ。どうやっても倒せっこない。
そんなことを考えているうちにオークナイトが切り掛かってくる。
「撤退を!」
「研君、間に合わない! 盾展開!」
剣戟音が響く。舞ちゃんの盾がオークナイトの一撃を受け止める。
「と、止めた。すげー」
迅君が驚いている。すかさず迅君が動く。
「
迅君の身体が異常に膨張する。そして基礎の体術。
「おら! 正拳突き!」
迅君の攻撃もオークナイトの頑強な鎧に防がれる。今の迅君のステータスはレベル10の人にも負けない。それを防がれるとなると、どうすれば。
迅君に大剣が振り下ろされる。
「しまった!」
駆け出すが間に合わない。
「逆行!」
一ノ瀬さんがそう叫んだ瞬間。オークナイトの大剣が少し前に戻る。巻き戻しみたい。
「迅君!」
ハッとした迅君がその場を離れる。
「一ノ瀬! ありがとな!」
迅君が一ノ瀬さんにお礼を言う。頷く一ノ瀬さん。
オークナイトの攻撃は恐るべき強度を誇る舞ちゃんの盾で防がれているが、肝心の攻撃が出来ない。
俺は暗視双眼鏡の目で、鎧の縫い目を探す。隈なく見て回し、首あたりに隙間を見つける。走り出して首を狙うが、オークナイトの高速反応で防がれ、盾で横っ腹を殴打される。
悶絶級の一撃だった。だが生きている。気付くと、うっすらと膜に包まれる。
「これは結界術?」
「研君もう一回! 迅君と隙を作るから!」
「分かった!」
オークナイトが俺に大剣を振るう。
「こっち! こっちに来て!」
挑発のレベルが足りず、オークナイトはまだ俺を狙っている。
「回し蹴り!」
オークナイトの顔面に背後から思いっきり蹴りを入れる迅君。舞ちゃんの挑発の言葉にオークナイトは少し意識を持っていかれた。その隙をつかれたのだ。流石の蹴りによろめくオークナイト。
俺は飛んで、暗視双眼鏡の目できちんと隙間を確認。あとはイメージで剣を振るう。的確に捉えられた首は見事に身体から離れ落ちる。
ゴトンと倒れるオークナイトの身体。
「やったのか?」
迅君がみんなに確認する。
「やった…勝ったー!」
みんな大はしゃぎで騒ぎまくる。格上の相手に見事にやってやったぜ! 突然耳に鳴り止まないファンファーレの音。レベルアップだ。
名前:目許研
種族:人間
Lv:10/100
HP:145/145
MP:145/145
攻撃力:55
防御力:55
俊敏:100
器用:55
運:10
SP:10
ギフト一覧
初級剣士:Lv1 ⭐︎
暗視双眼鏡の目:Lv1 ⭐︎⭐︎
虫の知らせ:Lv1 ⭐︎
攻撃力強化:Lv1 ⭐︎
俊敏強化:Lv10 ⭐︎
器用強化:Lv1 ⭐︎
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