第18話 相談

「で、奴隷商人に金貨一枚渡して、しかもこれから5枚も金貨を集めなきゃいけないわけだ」


「はい……それでその……」


「自分の事情で危険な仕事に俺たちを巻き込まないため、それと取り分を多くするため、か?」


俺は何も言っていないのに、俺がパーティを抜けたいという意志はランガさんにはすぐに伝わったらしい。

その理由まで正確に把握されていた。


「だかなタクミ、おまえさん、そりゃ無謀ってもんだ。

第一に、それだけの大金を得ようと思ったらゴブリンの巣をちまちま潰してたんじゃ間に合わねぇ、必然的に狙うのはクローベアか、オーガってことになる。

奴らが生息してんのは基本森の奥地だ。おまえを庇いながらじゃ、いくらジャックが強くなったからってどうにもならん。それに、飛行はまだ不得手なんだろ?」


「でも、20日もあれば……」


はぁ、とランガさんはため息をつく。


「金貨一枚で20日、たしかに商人にとっちゃ悪い話じゃない。基本的には約束守ってくれるだろうさ。だが、『倍額出す』なんてやつが現れでもしたら、多分売るぞ、その商人」


「……ッ!」


「その様子では、魔術的な契約書も交わしてないようですね……」


と、ミラさん。


「そうねぇ、そういうのがあれば安心できたけど、ないんじゃ多分二、三枚上乗せされたら売るでしょうね」


続けてテュースさん。


「まぁおまえの考えも詰めが甘かっただけで悪いもんじゃない。商人の方も通常の額じゃ売らないだろうし、何日かは流石に待ってくれると思うぜ。先に少し払っとくことで予約する。そういうアイデアの料金代わりとしてな」


「それにまぁ約束を律儀に守る生真面目な商人ってこともありえないわけじゃないしね」


「………」


「第一、そもそもなんでたかが同郷の知り合いのためにお前がそこまでする必要があるんだ?お前と同い年ならエルフでもない限りどこの国でも一人前の大人だ。奴隷に堕ちたのも自業自得ってやつだろ?」


というランガさんの厳しい意見。


「俺の故郷では、まだギリギリ子供です。

それに俺と同じ境遇なら、何もわからないまま故郷を放り出されて、帰り方もわからないまま彷徨ってた筈で……。

俺はたまたま運が良かったけど、もしかしたら逆だったかもしれない……あの娘は、俺なんです……だから!」


「……わかった。まぁ手がないってわけじゃない。お前ほど急ぎってわけじゃないが、金が欲しいのは俺たちも一緒だ」


ランガさんは真剣な目をして、一拍置いて吐き出すように言う。


「危険はあるが、このパーティなら行けるはずだ。

狩るぞ、相手は進化した『ネームドモンスター』【森の破壊者】『デストロイベア』だ」

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