第17話 クラスメイト

それを認識した俺は、思わずその制服に駆け寄る。


「おっとお客様、お待ち下さい」


と、俺の服装があまりにこの場にそぐわないからか、店員に見咎められてしまう。

だが、俺としてはそれはそれで都合がよかった。


「これ、この服、どこから来たものなんですか?」


「さぁ、それは私どもには……」


と、店員はとぼけるが、ここが古着屋である以上、誰かしらは知っているはずだ。


俺は店員にあまり露骨にならないように銀貨を2枚ほど握らせる。


「そういえば、この服は奴隷商人から買取ったものだったかな?」


と、店員は独り言風にそう言った。


「奴隷!?」


俺は驚いて大きな声を上げてしまう


「その奴隷商ってのはどこにいる!」


俺の気迫に押されたのか、今度は銀貨なしでも店員は答えてくれた。


「この街の南側に……」


「マジか、わかった、ありがとう!」


俺は階段を駆け降りて、そのままの勢いで古着屋を出て街を駆ける。


俺の中に嫌な想像が広がる。


そして、街の南側で俺は明らかにそれっぽい建物を発見した。


俺はその店の中に入り、鎖で繋がれた人々の間を通り抜ける。


すると、その場に仕立てのいい服を着たでっぷりと腹の肥えたオッサンを見つける。


俺はそのオッサンがこの店でそれなりに偉い立場だと雰囲気で察して、話しかけた。


「すいません、あの、「コレ」と同じタイプの服を持ってた人って居ますか?」


と、俺は一度宿に戻って取ってきた自分の制服を商人に見せた。


「あぁ、その奴隷でしたらこの店に居ますよ、よければ状態を確認しますか?」


と、そんなことを言ってくる商人の言い方に若干の苛立ちを覚えるも、大人しくついていくことにする。


奴隷商人についていくと、片足に鉄球をつけられて、片腕を鎖で壁と繋がれた女性。

クラスメイトで生徒会副会長だった『都ハルカ』さんがいた。


「み、都さん……」


「貴方は……あぁ、竜崎くんね、まさかこんなところでクラスメイトと再会するなんて思わなかったわ……」


と、都さんは元気なさげに答える。

こんなことになって元気があるわけないか……。


「………」


「惨めでしょう?あまり見ないで」


俺は彼女の近くにあった看板を見る。


【金貨5枚】


それが彼女の『価値』と言うわけだ。


俺は、心の中で一つの覚悟を決める。


「商人さん、少しお話が……」


「この奴隷を買いたいと?」


「一ヶ月、金貨一枚で待ってもらえませんか?俺が買うにしろ買わないにしろ、金貨一枚は今渡しますから」


「ふむ、それは初めての提案ですね。……いいでしょう、しかし、待つのは半月です」


「ありがとうございます……でも、そこをなんとか……せめて、20日になりませんか?」


「あのちょっと……」


口を挟もうとする都さんを無視する形で俺は商人と交渉を続ける。


「いいでしょう、では、20日。金貨は今ここでお支払いいただいても?」


「はい」


俺は制服と共に持ってきていた袋から金貨を取り出して商人に渡した。


「では、交渉成立ということで。20日待ちましょう」


そう言って奴隷商人は去っていった。


「金貨一枚をあんななあっさり出せるなんて、儲けてるのね」


「運が良かっただけだ。とりあえず20日以内、なるべく早くここにくるようにする。そうしたら、貴方をここから解放する。だから待ってて欲しい」


「えぇ、過度に期待はせずにまつことにします」


「じゃあ、急ぐから!」


俺はそう言って走り出した。


期限20日。───目標金額まで、あと金貨4枚と銀貨32枚。

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