第15話 逆転の飛翔

俺を乗せたジャックは虹色の輝きを纏ったまま大地を強く踏み締め、激突の衝撃で未だふらふらしているブラッククロウ・ドンに突っ込んだ。


それに気がついた奴は、空を飛んで安全圏へと距離を取ろうとする。


しかし、こちらには奴を追う術がある。

バサリッ!とジャックの前足が広がり膜を持った翼へと変じる。

大地を思いきり蹴り上げた力を利用して滑空。


まさかこちらに飛ぶ術があるとは思ってもいなかったブラッククロウ・ドンはあっさりとジャックの接近を許した。

 

そしてジャックはその掴むことにも使えるようになった強靭な脚の爪でガッチリとブラッククロウ・ドンを捕らえる。


『決めるぜ!相棒!』


「おう!いけジャック!【スカイフォールクラッシュ!!!】」


一度方向転換したジャックは、錐揉み回転しながら上空から地上へと一気に加速した。

重力をも味方につけたその勢いは凄まじく、ジャックは一筋の流星と化した。


凄まじい勢いで地面が迫ってくるが、俺に恐怖はない。

だってそれは俺の頼りになる相棒がやっているのだから。


地面に直撃する神がかり的刹那、ジャックは掴んでいたブラッククロウ・ドンだけを器用に地面に叩きつけた!


その衝撃は半端ではなく、まさに必殺の一撃。

ブラッククロウ・ドンは一瞬にしてカードへと変じた。


「ふぅ、何とかなったな……」


それを見届けたランガさんが、一枚のカードを手にしながら現れた。


「こっちも一応倒しといたぜ」


「まぁ討伐賞金も出ない雑魚ですがね」


続くミラさんが二枚のカードをこちらに見せる。


合計三枚。


ふたりがブラッククロウを、倒してくれたらしい。


「……今回は俺のせいで皆さんにご迷惑を……」


「それは後だ、今はこの森を抜ける方法を考えねぇと」


森には、ブラッククロウ・ドンがめちゃくちゃに荒らした痕跡が残っており、他のモンスター達もそのうち様子を観に来るだろう。


あまり猶予はない。


「それなんですが───」


俺は、進化して一回り大きくなったジャックの背中をポンと叩いた。


「なんか変な気分だ」


上空でジャックに両肩を掴まれながらテュースさんをお姫様抱っこで抱えながら、ランガさんはそんなことを言った。


ジャックの背中には俺とミラさん。


ミラさんは魔力で風を生み出し、ジャックの滑空の補助をしていた。


この森の空の覇者とも言えるモンスターは既に倒した。

空中からの移動が一番安全だったが故に、こう言うことになった。

ジャックは一回り大きくなったとはいえ二人くらいしか背中には乗れないから、補助のためにミラさんが乗る必要があり、それなら俺が掴まろうとも思ったが、テュースを抱えるのは俺の役目だ!とランガさんが言い、テュースさんも「あらあら」と、まんざらではなさそうだったので、この形になった。

あの二人はなにか特別な関係だったりするのだろうか?


そうしてしばらくして、俺たちは何とか無事に街まで帰還することができた。

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