第11話 信頼関係
───次の日。
「!見つけたみたいです。こっから北西の方向に向かった先、横穴にゴブリンの巣があるとジャックが」
俺はカードから伝わってくるジャックの思念をパーティの仲間に伝える。
「これで朝から三つ目か。稀に見るハイペースだな。規模はどのくらいだ?」
ランガさんの問いに俺はジャックへ思念を送る。
「大体さっきと同じくらい。三十数匹の群れみたいです」
「了解!なら一旦ここで休憩して、体制を整えてからぶっ潰しに行くか!」
ランガさんの号令で、パーティ四人、その場で休憩を取ることになった。
「それにしても驚いたわ、ジャックってすごく魔物を探すの上手いのね。戦闘にしても爪とブレスで大活躍だし、実は貴方一人でもやっていけたんじゃない?」
と、テュースさんが俺とジャックを褒める。
「いや、ジャックは確かに凄いですけど、テイマーの俺を守りながらだとあんなに大胆には動けないので……。
この前ジャックと俺だけでゴブリン狩りした時は今日ほどは動けてませんでしたよ。多分、俺のことを気遣ってくれてたんだと思います」
「しかしジャックを偵察に使うなんて言った時は驚いたぜ、実際実力は十分以上だったわけだが、最初はちょっと不安だったぜ。
俺はてっきり偵察用のモンスターをテイムしてくるもんだと思ってたからな」
と、ランガさんは少し意外そうに言った。
「あー、それももちろん考えて、実際ブラッククロウを三羽テイムもしたんですけど……」
「けど?どうしたんですか?」
と、ミラさん。
「最初の信頼関係を構築する段階で致命的にミスやらかしちゃって……結局契約解除して自由にしてやりました」
そう、俺は青年との邂逅のすぐ後に、ブラッククロウ三羽を自由にしてやった。
ブラッククロウは人間にとってはほぼ無害なモンスターで、討伐依頼もなかったからまぁ別にいいだろう。
「信頼関係ねぇ……テイムしたらそれでなんでも言うこと聞いてくれるわけじゃないのね」
「ですね。テイムすればちゃんと指示は出せるんですが、それを聞いてくれるかはまた別で。
最悪嘘の報告をしてくる可能性もあるかもしれないと感じたので……」
実際、真剣に感情を読み取ってみると、無理に契約した俺に対するブラッククロウ達の反抗心はかなりのものだった。
ジャックがいなければ、契約解除した瞬間に俺に襲い掛かってきていたかもしれない。
一応お詫びとして罠用に持ってきていた餌を全部あげた。
それで許してくれていたらいいのだが……。
「へぇ、テイマーの道ってのも楽じゃねぇんだな。おっと、お前さんの相棒が帰ってきたみたいだぜ」
ガザガサと森の草木をかき分けながら、ジャックが戻ってきた。
ジャックの位置は分かっていたが、実際対面するとまた感じるものが違う。
「ジャック、食うか?」
俺はジャックに肉を差し出して、ジャックはそれを喜んで食べた。
それを見るパーティメンバー三人の生暖かい視線が妙にこそばゆかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます