第10話 テイマー

訓練を開始したのが朝方、しかしこれがなかなか上手くいかない。


三匹のブラッククロウとの同調しようとすると、三匹の感じていることが一気に頭に流れ込んできて頭がパンクしそうになる。


三匹一気に同調するのは早々に諦め、一匹に集中する。


しかし、それも無理だった。


俺は焦る。

パーティの三人が今も命懸けで働いてくれて、その分け前をもらうっていうのになんの成果も得られませんでしたじゃ済まされない。


そして、焦っていては余計に同調なんてできない。


気合が空回りして時間だけが過ぎ、気がつけば昼だ。


バタン、と俺は草原に倒れ込んだ。


「腹減ったなぁ……」


よくよく考えてみれば朝飯は食ってない。

腹が減るのも当然か。


俺は、カバンの中から事前に買ってきていたサンドイッチのようなものの包み紙を取り出し、開ける。


「ここ、いいかい?」


と、俺がサンドイッチをたべようとしたところで、隣から声がかかった。


そちらに目を移すと、緑色のローブをきた優しげな雰囲気の青年が立っていた。


「まぁ、いいですけど……」


草原はそれなりに広く、スペースはいくらでもある。


それでも俺の隣がいいというのは不可解だが、それで断って雰囲気悪くするのもな……と思ってとりあえず了解する。


「君、テイマー?」


緑色のローブの青年が俺に問いかけてきた。


俺は、青年が俺と話すつもりで隣に座ったことに今更気がついた。


「ええ、まぁ。てんでだめなテイマーですけど」


「そうだね」


「…………………」


俺の自虐に、肯定の意を示す青年。


確かに俺はなんの成果も出せていないが、真っ正面から肯定されると頭にもくる。


「なんなんですか、あなた」


と、俺は少し怒りを込めてそう青年に問いかけた。


「ハハハ、怒らせちゃったかな?でも、事実だ。君はモンスターのことを何も考えていない」


「そんなこと……!!」


俺はその言葉を否定しようとして、ふと頭に閃きが宿ったのを感じた。


「そう、ですね。俺はあの三匹のことなんて何も考えちゃいなかった。」


あの三匹のブラッククロウは、今日いきなり俺と契約させられ、言うことを聞けと言われているわけだ。

そりゃ、従ってくれるはずなんてない。

考えてみれば当たり前のことだ。


「そうさ。君の気がついた通り、テイマー最もに必要なのはモンスターとの絆だ。それを紡ぐのを怠るなら、そんなテイマーはテイマーとは言えない」


「そして、それには時間が必要だ。さて、それを踏まえて、今君が最も力を発揮できる方法は、何かな?」


俺は、ベルトにくっつけていたカードホルダーから一枚のカードを取り出した。


フッと、隣で青年が笑った。


「じゃあ、僕はもう行くよ」


そう言って立ち上がる青年。


俺はお礼を言うために青年の方を見る。

だが、俺の口から出たのはお礼の言葉ではなかった。


「貴方も……テイマーなんですか?」


「そうさ。『君と同じ』、ね」


そう言って青年は紋章の描かれた一枚のカードを取り出した。

それはモンスターの契約の証の紋章。


ブワッと、竜巻のような風が周囲を撫ぜ、その中心に影が浮かび上がる。


百獣の王の躰に鷲の翼と頭。


「グリフォン……!!」


「縁があったら、また会おう!同じ道を進む同士よ!」


そう言って青年はグリフォンに乗って森の向こう側へと飛んでいった。


「はぁ……遠いな」


俺は、森の向こう側の地平線を見つめて、一人呟いた。






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