第8話 分け前
「じゃ、まずタクミには偵察用モンスターと契約してもらいたい」
パーティメンバーになる話を承諾した直後、ランガさんはそう言った。
「さっきも言ってましたけど、偵察用モンスターってどういうやつですか?」
偵察用のモンスター……意味はわかる。元々斥候を探してたってことだし、先行して偵察する役目をモンスターにやらせると言うことだろう。
だが、そんな器用なことができるモンスターなんているのだろうか。
と、そんな感じの質問をしてみた。
するとランガさんは
「あぁ、そうだな。普通のモンスターには難しい。けど、モンスターだって知恵がない訳じゃない。わかりやすいところで言うと、鳥型モンスターと契約して、獲物の巣を発見したらその上空で旋回してもらうとかしたらわかりやすいだろ?
それに、俺にはわかんない感覚だけど、テイマーと契約モンスターは何か特別な繋がりがあるんだろ?それを利用して契約モンスターの意思や感情をテイマーは知ることができるって聞いたけど、どうなんだ?」
「えと、ちょっと待ってください」
俺は目を瞑ってジャックに意識を集中させる。
すると、契約してから常にうっすらと感じていたジャックとの繋がりがより強く感じられるのがわかる。
俺はその感覚に導かれるようにカードに触れる。
『退屈』
ジャックは今退屈しているらしかった。
「いけそうです」
俺は目を開いてランガさんに告げた。
「そうか、なら明日は偵察用のモンスターと契約して、そいつとの意識の共有を高める訓練をしといてくれ。俺たちは斥候の要らないような依頼をこなす。パーティのために訓練してもらうわけだからこの依頼の報酬も4等分だ」
「「なっ!」」
俺と、ミラさんが驚く。
そりゃそうだろう。役に立たないどころか依頼に参加しないのに分け前を貰えるって言うんだから。
「納得できません!」
と、ミラさんが怒鳴る。
俺はが感じているのは戸惑いだが、ミラさんの怒りも納得できる。
「まぁまぁミラちゃん落ち着いて」
「これが落ち着いていられますか!」
「いいから!これはパーティにとって必要なことなのよ」
と、テュースさんが少し強めにミラさんの言葉を遮る。
「私たちはもう一連托生の仲間なの。そして彼が明日やることはパーティにとって必要なことで、ちゃんとできればパーティの実績や安全性を大きく上げてくれる。
それをぶっつけ本番でやってもらっちゃ困るのよ?それはわかるでしょ?」
「ですが!」
「ですが?パーティの為に1日潰させるんだからそれなりの報酬はひつようでしょ?じゃないと私達への信用にも関わるしね」
と、テュースさんは言った。
「それになぁ、ミラ。お前が魔法をほとんど使わない依頼も時にはあったよな。テュースが回復の祈りを使わない依頼も。俺の剣がろくに役に立たなかったやつもな。あと、臨時でパーティに入ったやつがいた時とかさ。そんな時俺たちはどうしてた?」
「きっちり山分けでした……」
ミラさんはすこししゅんとしてそう言った。
「だろ?今回のこれもそういうことだ。タクミにはパーティの為に訓練してもらう分それに見合った金は出す。そんだけの話だ」
「…………………わかりました」
しばらく俯いてから顔を上げたミラさんの表情に、先程までの怒りはなかった。
ついでに、横で聞いていた俺もとても気合が入った。
「と、言うわけで明日は頼めるか?」
「はい!!」
俺は目一杯気合を入れて答えた。
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