第4話 冒険者ギルド

『冒険者ギルド』



その施設は『ラガリア』の真ん中にドン!と一際大きな存在感を持って鎮座していた。


『冒険者ギルド』とは、魔物や、人類未開の土地に住むと言われる魔族に対する人類の国際的組織であり、その権限は場合によっては大国を凌駕することもあるらしい。


そして、冒険者ギルドに登録した『冒険者』は、所属国のルールから外れ、代わりに冒険者ギルドのルールに縛られ、守られる。


言ってみれば、冒険者ギルドという領土を持たない国の民になるようなものだ。


だから税も冒険者ギルドに支払うことになるし、冒険者としてのランクを上げれば色々な権限が与えられる。

もちろん大きな責任と義務も付随することになるが。


冒険者には意外なことに金を払えば誰でもなることができる。


理由はよくわからないが、まぁ俺のようなあまり頭の回転の良くない人間にはわからない思惑やらなんやらが複雑に絡み合っていたりするのだろう。


そうして、俺は受付で支払いと登録を済ませ、晴れてギルドの一員となった。


ギルドの末端、Eランク冒険者として登録した俺に、受付の方に一枚のカードを渡された。


それは『冒険者カード』というらしく、魔物のカードを元に作られた冒険者用のカードらしい。

これが冒険者である身分証になる、と。


俺は早速依頼を受けようと依頼の用紙が貼られているボードに向かう。


そして、その内容に違和感を感じた。


俺は『ゴブリン十匹以上の駆除』の依頼用紙をボードから剥がし、再度受付へと向かった。


そして違和感について尋ねた。


「この街って、大きく分けて外につながる道

は三つありますよね?そのうち一つの道の周りだけ依頼が極端に少ない気がするんですが」


受付の女性はこう答えた。


「そちらの道の方には『ランドランナー牧場』があるのは知っていますか?」


「はい。俺そっちから来たので」


「そこの管理者のドルカさんという方がとても人のいい方で、定期的にランドランナーの訓練と称しては周りのモンスターを狩ってくださっているんです。お陰であの周りには危険なモンスターが居ないんですよね」


「なるほど。だから依頼もほとんどないと」


「そうですね。ギルドとしては一応面子というものもあるので見回りくらいはしますが、まぁその程度ですかね」


「そうだったんですか……」


俺の師匠は思った以上に立派な人だったらしい。


俺が森を数時間彷徨っても生きていられたのも、もしかしたら師匠がモンスター狩りをやっていてくれていたからかもしれない。

いや、そうに違いない。


───師匠、ありがとうございます。

俺は心の中で改めて師匠に礼をした。


彼は俺の命を救い、導いてもくれた。人生の大恩人と言って過言ではない。


───約束します。いつか、俺は必ずドラゴンテイマーになって師匠に会いに行きます。


決意を新たにした俺は、早速ゴブリン駆除に向けて師匠の守っているのとは別の道へとつながる街道を歩き出した。



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