第2話 旅立ちの一歩
その夜、俺は緊張してなかなか寝付けなかったが、数ヶ月分の習慣とは恐ろしいものでいつも朝の仕事をする時間にしっかり目が覚めた。
そして、数ヶ月を過ごした屋根裏部屋を見渡す。
「こことも今日でお別れか……思えばなかなか大変だったな……けど」
俺は、自分の両手でパシンと両頬を打つ。
「今日からはもっと大変だぞ、なんせテイマーとして冒険の旅に出るわけだからな!」
俺は気合いを入れ直して師匠のいる家へ向かった。
「おお、起きたか。おいおい、なんだか眠そうだな。もう一泊してくか?」
と、俺の寝不足をたやすく見破った師匠は冗談混じりな顔でそう言った。
「いや、大丈夫です。今日って決めたらその日が一番いいですから。それに、冒険は常にベストコンディションってわけにはいかないでしょ?」
「へっ!若造が言いやがる。でもま、その通りだ。ほれ、これがジャックの『カード』だ」
と、師匠は俺に一枚のカードを渡してきた。
そこには、
──────────
種族:ランドランナー
RANK⭐︎⭐︎
LV10
名前:『ジャック』
HP:450/450
MP:120/120
STR:240
VIT:302
AGI:396
INT:76
DEX:43
SKILL:ガイアエナジー、ダッシュ、スクラッチ、影分身、速度強化
──────────
とあった。
「師匠、これは……」
「これがジャックの「モンスターカード」だ。
こいつにお前の魔力を込めることでジャックとの契約が完了して、晴れてジャックは正式にお前のモンスターになる」
やり方はわかるか?
と、師匠に言われたが、それはなんとなくわかった。
カードを持った瞬間、手の甲に熱が灯るのを感じた。これをカードに移すイメージで……。
「おお、成功だ。流石俺が見込んだだけはある」
と、師匠が言う。たしかに何かジャックと特別な繋がりが出来たような気がする。
厩舎にいるはずのジャックの存在を確かに感じ取ることができる。
「カードの裏面を見てみな」
師匠の言葉に俺がカードをひっくり返すと、そこには俺の手の甲にある紋章と同じマークが描かれていた。
「それが契約の証だ」
師匠はそう言った。
なんでも、モンスターは体のどこか(どこかはわかっていない)にカードを持っていて、死ぬとカードは残るらしい。
そして、そのカードはまっさらな状態で、それをテイマーの紋章を持つものが生きているモンスターに使えばそのモンスターをテイムできるらしい。
ちなみに別の職業を持つ人間が魔力を通すとスキルカードというものになるのだとか。
しかし、スキルをカードに転写する技術は高等技術で、スキルカードはかなりの高額なのだとか。
「さて、これで準備は整ったな。さぁ行け若者よ!広い冒険の世界に!」
師匠はそう言って小屋の扉を開け放った。
太陽の光が扉から入ってきて眩しい。
俺はその扉をくぐり、ジャックの待つ厩舎へと向かった。
そして、厩舎で待っていたジャックに跨り、師匠に手を振って別れ、今俺のいる国、『ドランド王国』の大都市、『ラガリア』に向かうため、ジャックに乗って数ヶ月前彷徨っていた森に再び入った。
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