第参話 ◇化ケ物の仔◇ 下Ⅰ

刑部を見つけた瞬間から、俺は攻撃を始めた。


あえて、は使わずに、俺自身の力だけで攻撃をする。


刑部は俺を見た瞬間から、俺の正体は見破っていたのだろう。


でなければあんな怯え方はしない。



行部は恐怖でか、足を竦めてしまったようだ。


俺が近づいでも逃げようともしない。



まずは見せしめとして、刑部の眠っていた岩を植物を操って砕いてやった。


それでも刑部は俺に小さく威嚇の鳴き声をかけてくるだけだった。



それでは楽しくないので、刑部の足元をめがけて風を起こしてやった。


刑部は面白いくらいに逃げまとった。



刑部もその神通力を使って作った岩を飛ばして攻撃を返してくる。


が、それでは俺には通用しない。


岩は軽く手を振って周りに飛ばした。


砕くだなんて面倒なことはしない。



刑部も、俺に攻撃が通用しないと知るとすぐに逃げ始める。



だがそれは俺の狩猟本能をくすぐって、俺の攻撃は激しさを増すばかりだ。


刑部に向けた攻撃が周りの化け狸たちを襲うが、そんなことは意に介せず俺は攻撃を続ける。



やつのことは場所も場所だし相手も相手だから秒で殺すことができるが、相手は妖怪だから死んでもまた長い時をかけて復活する。




それに、久しぶりの狩りは楽しみたいしな。





   ☆★☆






俺ハ遂ニ力ガ尽キテシマッタ



モウドンナニ足ヲ動カソウト自分ノ体ヲ叱咤激励シテモ、モウ体ハ死ンデシマッタカノヨウニ動カナカッタ


ソウカ、俺ハココデ死ヌノカ


イヤ、死ンデモ、マタ蘇ルコトノデキル予感ハスルガ、死ヌノハ嫌ダ


痛イノハ嫌ダ



其レニ、我ガ子達モアイツニ殺サレタ

アイツノ攻撃ノ余波ダケデ、コノ森ニイル子ドモタチノ半数以上ハ死ンデシマッテイル



ソレモアイツヲ止メルコトノデキナカッタオレノ所為ダ



アチラノ世界デ、ドウ我ガ子達ニ詫ビヨウカ





ソンナ事ヲ考エテイタラ、動カナクナッタオレヲ見テ、ヤツハ近付イテ来ル


ソシテツマラナソウニ目ヲ細メナガラ言ッタ



「そうか、もう終わりなのか。……つまらんなぁ。もっと遊びたかったのに」



オレハ目ヲカット開ク



遊ビタイダトォ?



今マデノハ遊ビダッタトォ?



ツマリ、オ前ハ遊ビデ我ガ子達ヲ殺シタノカ?




体中ノ血ガフツフツト煮エタギル


嘗テ無イ程、オレハ怒リヲ感ジテイタ




オ前サエイナケレバッッッッッ―――――――!!!



殺シテヤルッ――――!


殺シテヤルッ――――!


我ガ子ノ分マデ、彼岸デ詫テ来イッ――――!





『死ィネェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッッ――――!!!!』




体ガ動ク



動クタビニ、血肉ヲ引キ千切ラレル様ナ痛ミガオレヲ襲ウ



ソレデモッ!



我ガ子達ヲ殺シタコイツヲっ――――!



体中ヲ彼岸ニ陥レヨウト襲ウ痛ミヲ無視シテ、オレハ足ヲ使ッテ飛ビ上ガル



動イタ先カラ体ガ崩レテ行クノヲ感ジルガ、ソンナコトハ気ニセズニ天高ク跳ブ



奴ハタダタダ嬉シソウニ恐ロシイ笑ミヲ浮カベルバカリダッタ



ソレニ小サナ違和感ヲ覚エナガラモ、オレハ止メナイ



マダ昼ダガ、ソレデモ無理シテ变化スル




『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』




オレハ空気ニ、空間ニ、森ニ、木々ニ、草木ニ、石ニ、土ニ、風ニ光ニ虫タチニ



森ト一体化スルヨウニ变化シタ



コノ瞬間カラ、オレハコノ森ヘト成ッタ



ヤツヲ攻撃スル



コノ爪ハ風ノ刃トナリ、



コノ牙ハ岩トナリ、



森ノ全テガヤツニ攻撃ヲシタ



自分ガ死ヌコトハ考エナイ



タダ、ヤツヲ殺スコトダケヲ考エル



自分ノ持テル全テノ力ヲ持ッテヤツヲ殺シニカカル



体ノ節々ヲ变化サセテ武器ヲ作ル



コノ身ガ崩レテモ構ワナイ



タダヤツガ死ンデクレレバ――――!



森ニイル全テノ物ガヤツニ向カッテ集マッテイク



奴ハ全テノ物ニ押シ潰サレ、身ヲ貫カレ、死ヌダロウ





ソノ、筈ダッタ





奴ハ一歩モ動カナカッタ



手ヲ、一振リシタダケデ――――




『ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア゛』




先程マデ感ジテイナカッタハズノ痛ミガ、オレヲ襲ウ



アマリニモ大キナ傷ミノセイデ、俺ハ变化ヲ解ク



魂ガ千切ラレタ



ソウ一瞬デ分カルクライニ、オレヘノ痛ミハ凄マジカッタ



奴ハタダ、手ヲ一振リシタダケダッタ



ナノニコノ痛ミ、コノ威力



今更ナガラニ圧倒サレル




コレガ山ノ神ノ力ッッッ




オレガ痛メバ痛ムホド、ヤツノ笑ミハドンドント歪ミ、マタ黒クナッテイッタ




死ンダヨウニ、オレハ地面ニ倒レ込ム



モウイインダ



別ニ、ヤツトノ力量ノ差ニハ最初カラ気ヅイテイタ



タダ気付カナイフリヲシテイタダケダ



悔シサハ感ジナイ


コノ敗北ハ、俺ノ力不足ニ全テガ完結スル



ソレデモオレハ最後ノ足掻キト、辛ウジテ残ッテイタ尾ヲ变化サセ、刃トシテヤツヲ襲ウ



ソレヲヤツハ動キモセズニ横ヘ受ケ流シタ




モウイイダロウ




オレハ続ケテソノ身ト激痛ヲ代償トシテ变化シ、攻撃スル




ソレヲヤツハ動キモセズニ受ケ流シ続ケル




ソシテオレガモウ攻撃セル気力ヲ少シデ失イソウナ頃ニヤツハツイニ殺シニカカッタ




今マデ、死ヌコトヲ大キク捉エテイナカッタ筈ナノニ、殺サレルト思ウト全身カラ恐怖ニ蝕マレ




死ニタクナイ



デモ死ヌ



死ニタクナイ



デモ死ヌ



死ニタクナイ




デモ………殺サレル





奴ガソノ腕ヲ振リ下ロシ、オレヲ殺ソウトs




「あら、可愛い子狸ちゃんじゃない」




一人ノ少女ノ声ガ、面白イヨウニ森ニ響イタ


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