配信冒険者、馬鹿にしてきた冒険者をボコボコにする


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 姿かたち、そして名前や性別まで変えて、

 俺は新たな冒険者の一歩を踏み出した。


 新しく生まれ変わったの名はリュオ。


 男の冒険者リュートとして獲得した称号とランクは失ったものの、

 レベルと所持していたアイテムはそのままのため、

 思ったより早くボクの名は知れ渡るようになった。


 一か月後、リュオであるボクは冒険者ランクも元のBとなり、

 配信も男のリュートだった時とは比べ物にならないほど、

 人気となった。


 今日も配信を見た人たちから、


『すごいですね、難易度Aのダンジョンをソロで踏破するなんて!』


『テンポ良い戦闘の動画配信、観ていて気持ちいいです!』


『スカート姿のリュオたん可愛い!

 生足ペロペロしたいにゃん、デュフフ・・・』


『少ないですが、配信活動の足しにしてください。

 これからも楽しみにしています!』


 といった、課金付きのメッセージも沢山来た。


 懐も最低限の生活ができる程度には潤い、

 ようやく配信冒険者としての一歩を踏み出せた感じだ。


「よし、頑張ろう・・・!」


 だがもちろん、そんなボクを良く思わない冒険者もいる。


 ある日、ギルドに行くと、

 以前、男のリュートだった時のボクを馬鹿にした,

 シドという冒険者にからまれた。


『あんた、リュートだよな?

 女に化けてまで人気が欲しいのかよ?

 ほんと人生終わってんなww

 親に見捨てられるのも当然だわwww』

 シドはそうやってボクをあざけってきた。


 さすがにカチンときたので、

 ボクは言ってやった。


『人の事をどうこう言えるほど、

 あなたは充実した人生を送っているのでしょうか?

 こんなところで他人にマウント取っている暇があったら、

 将来のために資格スキルの一つでも取ったほうがいいのでは?』

 と・・・。


 痛いところを突かれたのか、

 シドの口調が変わった。


『ふざけんじゃねえ、この落伍者が!

 二度と配信できないようにしてやろうか!?』


『冒険者同士は戦えない事を知らないのですか?

 どうしてもやるなら決闘という形になりますけど、

 負けたら相手に、所持アイテムを一つ取られるんですよ?』


『上等だ!

 その決闘風景も配信してやるよ。

 見た目女の子の冒険者が、筋骨隆々の男にいたぶられる動画は、

 さぞかし人気が出るだろうぜwww』


(ゲスが・・・)


 シドがするまでもなく、

 ボクはこの決闘を動画として配信してやる事にした。


 それも、奴の今のセリフからだ。



 ――結果は圧倒的だった。


 レベルは大差ないが、

 冒険者として費やした時間が違ったのだ。


 僕の圧勝だった。


 戦闘中、でかい図体で大剣を空ぶり続けるシド。


 逆にボクは、両手に持ったショートソードでコツコツとダメージを与え続け、

 最後に二刀流技のX斬りで勝敗はついた。


 リュオであるボクの足元に這いつくばった後も、

 シドは罵詈雑言を並べた。


『やれやれ、満足ですか、底辺人間殿w

 こんな勝負で勝ったからって、お前の社会的地位はどん底のままなんだよww

 毎日毎日くだらない配信で周りから恵んでもらって、まるで浮浪者だなwww』


 ボクは何も言い返さず、

 決闘の勝利者の権利として、シドの所持品からレアアイテムを頂いた。


 よほど大事にしていたものだったのだろう、

 シドの遠吠えが激しくなった。


『ふざけんな、このオカマ野郎!

 そのラストエリクサー手に入れるのに、俺が何百時間かけたと思ってんだ!?

 難易度Aの火山ダンジョンで、ひたすらフェニックスを刈り続けてやっと手に入れたんだぞ!!

 対Sランクモンスター用に取っておいた、最終兵器だってのに!!

 お前には冒険者どころか、人間としての常識すらないのかよ!!!!

 さすが底辺の落伍者だよなwwwwwwww』


 だが、彼の暴言はそこまでだった。


 周りで見ていた他の冒険者たちが、

 シドの言動を攻め始めた。


『いいかげんにしなさい!

 いくら何でもマナーが悪すぎます!!』


『決闘の勝者が敗者のアイテムをもらえるのは、当然の権利です。

 それに貴重なアイテムは五つまで保管できるのに、

 それをやらなかったから取られたんでしょう?』


『相手の事なめすぎ・・・。

 それに、ここで冒険者の実生活をあてこするなんて最低です。』


『申し訳ありませんが、こんなマナーのない人とは一緒にやっていけません。

 今日限りでパーティーを抜けさせてもらいます。』


『右に同じく』


『以下同文~(笑)』


 と、彼のパーティーだった者たちまで、

 ボクの味方をしてくれた。


 それに対しシドは、


『俺は悪くない!!!!』

 と、決して自分の非を認めようとしない。


 こういった状況で、こういう態度をとった冒険者がどうなるか・・・、

 考えるまでもないだろう。



 そして・・・、

 この一部始終をボクは、

 生配信していた。


 シドがボクに罵声を浴びせれば浴びせるほど、

 閲覧者の数は伸びていった。


 そして、彼らのシドに対する中傷ヘイト言葉メッセージも・・・。


『何こいつ?

 自分からケンカ売ってきたくせにww』


『完全に自業自得じゃん。

 なのに、相手の悪口とかww』


『リュオたんを悪くいう奴は、

 僕が許さない!!!!』


『常識ないのはどっちだよwww

 こいつ絶対、実生活でも周りから浮いてるわwww』


 完全に四面楚歌となったシド。


 もはやこの先、彼は配信活動はおろか、

 冒険者としてやっていく事すら難しいだろう。


 そしてその後、

 冒険者シドの姿を見た者はいない・・・。



【次回の配信に続く】



 _________________________


『君』は読み進める……。


(ほんと礼儀正しい冒険者ばかりだな。


 主人公の見た目と性別が変わったからか?


 可愛い女の子の前では、男は紳士ぶりたがるという事か……。


 逆に、配信見ている連中のほうが口が悪いな。


 何か変態っぽいのもいるし……。


 やっぱり、冒険者たちと違って主人公と直接からむ事がないからか?


 現実のSNSでも、

 匿名希望の書き込みのほうが荒れているケースが多いものな。


 ――なにはともあれ、

 まずは小手調べのざまあ展開ですっきり……!


 この先、追放した家族のざまあも見たいものだ。


 そういう期待もこめて、

 このまま画面をスクロールして、

『応援ボタン』と『コメント』だ!)





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