最後はみんなで大泣きした(中4)


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 パーティーの荷物のほとんどは、

 荷物持ちポーターの私に預けられていた。


 食料や回復薬、予備の装備・カンテラとその火種等、

 ダンジョン攻略の必需品は、私が背負う大きな雑嚢リュックの中に収められていた。


 その雑嚢リュックを私は、

金色こんじき六翼ろくよく』にアンデッドの群れを差し向けた際、

 アイテムボックスに収納して隠したのだ。


 そして、彼らと合流した時には、

 アンデッドの群れから逃げ切るために、

 雑嚢リュックを捨てて逃げてしまった、と説明した。


 彼ら自身も、いくつか身に着けていたものを捨てて逃げてきたため、

 私の行動は思ったほどとがめられなかった。


 モリアードだけは私を指さして、


「こいつ、荷物の大半を放り捨ててしまったらしい。

 まったく、ふざけてるね・・・。

 食料も火種も、ほとんど残っていないときた」

 などと、嫌味を言い続けていたが・・・。


 その言葉に、ライラが過敏に反応していたが、

 おそらく、ドワーフの歌詞が頭をよぎったのだろう。


『三人のドワーフがお酒を飲みつくした

 一人がカラカラに乾いて二人になった』・・・。



 ――ともあれ、お互いが疑心暗鬼に陥ってきた上に、

 この先補給が利かないという状況は、

 期待以上に彼らの精神を追い込んだ。


 まず疑われたのは、

 人形を壊す際にそれをためらったライラだった。


 ウーゴとモリアードによって後ろ手に縛られ、

 私が彼女を見張る事になった。


 ミノタウロスの生息地が近づくと、

 彼らは最後の準備をするため腰を下ろした。


 ウーゴとモリアードは、

 彼ら自身が持っていた携帯食料を食べ始めた。


 私も懐の携帯食料を取り出し、

 縛られているライラの口元に持っていき食べさせた。


 これは、自然にライラの傍に寄るための行動だった。


 ライラに接近すると私は、

 ウーゴ達に気づかれないように、

 ライラを縛っていた布を切った。


「隙をついて逃げて・・・!」

 小声でそう彼女に言って、どこに逃げればいいかも目線で指示した。


 食事が終わり、モリアードが付与術を自分とウーゴにかけ始めた。


 事前の強化に集中する二人・・・。



 ――ライラが動いたのはその時だった。


 モリアードを突き飛ばし、

 私が教えた通りの道に彼女は逃げた。


 私が熟知しているその道を・・・。


 すぐにウーゴがライラを追いかけた。


 その隙に私は、

 残ったモリアードに薬をかがせて気絶させた。


 そして、そこに置かれたカンテラの灯りを消し、

 暗闇に彼を残したまま、

 ウーゴを追いかけ合流した。


 ウーゴはライラを懐柔させるためか、

 とにかく彼女に話を合わせようと、

 その主張をコロコロと変えていった。


 最初は、

『ここまで仲間を殺してきた彼女を許す』

 というもの・・・。


 次に、

『本当はモリアードを疑っている』

 というもの・・・。


 そして、最後言いかけた主張は・・・、

 驚いたことにかなり真実に近づきかけていた。


 だが、それをウーゴが話し終える前に、

 モリアードの悲鳴が聴こえ、

 二人は慌てて引き返した。


 だが、道をよく知っている私は、

 彼らが暗闇でまごまごしている内に、

 あっという間にモリアードの元にたどり着いた。


 この時点では、まだモリアードは生きていた。


 彼が悲鳴を上げたのは、

 私が従属化テイムしていたミノタウロスを、

 目の前に現われさせたからだ。


 私の指示通り、

 ミノタウロスはモリアードの口をふさぎ、

 身動きができないよう押さえつけていた。


 そのまま私は闇の中で、

 アイテムボックスからノックの剣を取り出し、

 ――モリアードに突き刺した。


 ここまで殺してきたメンバーに対してもそうだったが、

 これだけは・・・、彼らの命を奪う直接の一撃は、

 従属化テイムした魔物に任せず、私自身の手でやりたかったのだ・・・。


 ウーゴ達が追いつくよりも早く、

 私はいったん、ミノタウロスを暗闇の中に戻らせ、

 再びカンテラに灯りをともした。


 私が倒れているモリアードの傍にいても、

 ウーゴ達に疑われる事はなかった。


 先に三人共にモリアードの悲鳴を聴いていたため、

 ただ、自分達より早くたどり着いたとしか考えなかったようだ。


 ライラは必死でモリアードに回復魔法をかけた。


 だが、ほどなくしてモリアードは死んだ。


 ライラは自分が、序盤の消耗から回復しきれていないため、

 魔力が足りなかったのだと嘆いた。


 ――案の定、それをドワーフの歌詞とも結び付けて・・・。


『三人のドワーフがお酒を飲みつくした

 一人がカラカラに乾いて二人になった』。



 ――だが、彼女が万全の状態だったとしても、

 モリアードを助ける事は不可能だったろう。


 彼を刺した剣には、

 毒が塗ってあったのだから・・・。



 ――その剣がノックのものだという事に気づいたのは、

 ウーゴだった。


 私がノックだけ、比較的綺麗な死体にしたのは、

 このためだったのだ。


 壊したはずのドワーフの人形が、

 新たに傷を付けてモリアードの手から発見されると、

 狙い通り、ウーゴはノックが生きていると考え出した。


『ノックは生きている』・・・。


『そして、今も近くで自分の命を狙っている』・・・。


『—―目の前にいるライラの共犯として』・・・。



【つづく】


 ━━━━━━━━━━━━


 『君』は読み進める。


 段々と読むのが苦痛になってきたにもかかわらず、

 それでも先を読み進める。


 ――そして、もちろん『君』は、

 次の回に行く前に画面を下にスクロールして、

『応援』や『コメント』を入れる事も決して忘れない……。

















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