最後はみんなで大泣きした(中1)
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腹違いの兄ニコルの亡き母は
彼女がなくなった時、その遺体はいつまでも美しいままだったという・・・。
長い間ダンジョンに放置されていた兄の亡骸も、
やはり腐敗のあとすらなかった。
・・・つまり、
死んだ時のままだったのだ。
兄が最期の瞬間に刻まれたであろうおびただしい傷跡は、
いまだ生々しさを失っていなかった・・・。
その時、近くから魔物の気配がした。
暗闇から現れたのは、
まだ子犬くらいのドラゴンだった。
その子は震えながらも、私に近づいてきて、
「ピィッ、ピィー・・・」
と鳴きだした。
まるで何かを伝えようとしているように見えた私は、
そのドラゴンへ
大人の成竜はとても無理だが、
その子はまだ幼かった。
私たちはお互いの伝えたいことが分かるようになった。
――そして、私は知った。
兄ニコルを殺したのはドラゴンなどではなく、
彼の仲間だった『
その時ニコルは、
目の前に現われた成竜を
兄が
私はその時初めて知った・・・。
だが、兄の仲間たちは、
ドラゴンがおとなしくなったのを見て、
殺すことを思い立ったという。
兄はドラゴンに逃げるように指示しようとして、
仲間の一人に後ろから刺されたらしい・・・。
そこからは誰も、
兄を死に追いやることに躊躇するものはなかった・・・。
私は、兄が誰にどんな無慈悲な攻撃を受け、
どう残酷に殺されたかを聞かせてもらった。
目の前の幼いドラゴンから。
そう、『金色の六翼』が殺したのは、兄だけではない。
彼らは、この子の親も殺したのだ。
話を聞き終わった後、
私は幼いドラゴンの前に手を付いて詫びた。
「ごめんな、私の兄が
君の親は死なずに済んだのに・・・」
そんな私に、幼いドラゴンは言った。
『君のお兄さんはあの時、傍にいた自分の存在に気づき、
そして、目線で逃げるよう伝えてくれた』
と・・・。
だから今まで、兄の亡骸が傷つかないよう守っていたのだ、と・・・。
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私は、兄の復讐を決意した。
一月後には冒険者ギルドに偽名で
まずノックという冒険者に近づいた。
剣の実力はあるが、
娼館で身分の低い店の女を、
自分の趣味に付き合わせて壊しまくった、
という立派な経歴を持つ剣士だ。
酒場で何度かおごった後、私は彼に話を持ち掛けた。
「『金色の六翼』に入りたいのだが、自分には何のツテもない。
だからあんたが先に入って、その後に仲間に自分を紹介してくれないか?」
必要な金は出すから、と大金をちらつかせると、
ノックはすぐに話に飛びついた。
ノックが『金色の六翼』のメンバーになってから一週間後、
彼らは、ノックの推薦で私を自分たちの専属
「だが、お前は『金色の六翼』のメンバーではなく、
あくまで荷物持ちだ。
俺たちのやり方に口出しするんじゃないぞ」
リーダーのウーゴは、まずそう言って釘を刺してきた。
これは私にとって、逆に好都合だった。
私の考える復讐のためにも、
彼らにとって私は、仲間でありながらも空気のような存在でなければならないのだ。
そのために私は、
彼らのやる事をただ黙って見ていた。
暴行、恐喝、強姦、浮気・・・、
パーティーのあらゆる後ろ暗い行為の現場を見ても、
私は我関せずという態度を貫いた。
そうしているうちに、
彼らは私が近くにいても、気にせずやりたい放題するようになった。
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いよいよ、復讐を決行する準備が整った。
私は偽の依頼によって、
『金色の六翼』をダンジョンの中におびき寄せた。
最初に殺したのはノックだった。
彼は私の復讐対象ではないが、
1人だけ生かして返すわけにはいかなかった。
だが私は、
彼を一緒に殺す事に何のためらいもなかった。
街の娼館には、
彼によって手足を失った女性が、両手の指でも足りないほどいるのだ。
その内の何人かは、本来ならまだ客も取れない年齢の少女だった・・・。
ダンジョンに入るとき、
ノックはいつものように、
私は、その飴に遅効性の毒を加えていた。
ダンジョンに入って割とすぐに、
ノックはその毒で倒れた。
それと同時に、
私は
パーティーを襲わせた。
皆がゴブリンに気を取られているその隙に、
私はアイテムボックスから古びた矢を取り出し、
倒れているノックの脚に刺した。
そしてその手に、
一体目のドワーフの人形を握らせた。
皆がノックの死体を発見した時、
私は言った。
「さっきノックが倒れたのは、この矢が当たって・・・?」
と。
それを聞いた四人は、
案の定ノックが毒矢に当たって倒れたと思い込んだ。
ゴブリンの武器には毒があった・・・、
そう信じこまされた四人は、慌てて
必要以上の治療を要求しだした。
かくして、ダンジョン序盤にしてライラは、
その魔力を予想外に消費する事になったのだ。
【つづく】
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