最後はみんなで大泣きした(上)


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 ニコルの腹違いの弟だ。


 兄のほうが一回り上にもかかわらず、

 見た目には私のほうが年上に見えた。


 それは、父の亡き前妻であるニコルの母親が、

 長命種の森人エルフだからだ。


 半森人ハーフエルフのニコルは三十を過ぎても、

 私たち人間からは十代半ばの少年にしか見えなかった。


 私たち兄弟は、ある従魔士テイマーの家に産まれた。


 代々、優秀な従魔士テイマーを輩出する家系で、

 貴族の覚えもめでたい一族だ。


 神経の図太い貴族の中には、

 珍しい魔物を飼いたいという者が多いのだ。


 そのため、従魔士テイマーとしての才能に恵まれなかった者は、

 一族でも肩身の狭い思いをする事になる・・・。


 兄のニコルは、動物に好かれた。


 犬や猫だけでなく、

 家畜の馬や牛まで、彼になついていた。


 ニコルも優しい笑顔で、そんな動物たちをかわいがった。


 私は、そんな兄を素直に慕っていた。


 だが、成人を過ぎてもニコルは、

 従属テイムの力を発揮できないでいた。


 あの時、兄がドラゴンと出遭えていれば・・・。


 一族の兄に対する目も、どんどん冷たくなっていった。



 ――だから彼は家を出て、冒険者となる道を選んだ。


 そして、遠く離れた街で荷物持ちポーターとして、

 あるパーティーの一員となった。


 それが『金色こんじき六翼ろくよく』だ。



 ――一方、私は従魔士テイマーとして順調にその力を伸ばしていった。


 一族の中での地位も上がり、貴族とのコネも出来た。


 兄からはたまに手紙が来ていたが、

 忙しさにかまけて段々返事も出さなくなった。


 だから、しばらくしてプッツリと兄からの便りが途切れた時も、

 寂しい反面、仕方ないと思ってしまったのだ。


 私は今でも後悔している。


 何故、一度でも会いに行かなかったのだろうか、と・・・。


 何故、兄が家を出るとき、

 私は付いていかなかったのか、と・・・。



 ――それから数か月後、

 その街の冒険者ギルドから手紙が来た。


 兄ニコルの訃報だった・・・。


 冒険者というものは基本、

 素性の分からない連中の集まりである。


 ギルド登録時に、職員が聞く事もない。


 だから本来なら冒険者は、

 死んでもそのまま無縁墓地に埋葬される事になる。


 だが、ニコルのいた『金色の六翼』は、

 ドラゴンを倒したパーティーという事で、

 ギルドでも下にも置けない立場となっていた。


 そのドラゴン討伐中に彼らの一員が死んだという事で、

 ギルドは血眼になって、その縁者を探し回ったという。


 そして、ようやく私たちの元へたどり着いた、という事だった。


 手紙の内容は、

 ぜひギルドへ来て、ニコルの仲間達『金色の六翼』と共に、彼をしのんであげてほしいというものだった。


 だが、父は行かなかった。


 私が代理で行こうとしても、

 父はそれを許さなかった。


「冒険者などという馬の骨共と接触して、

 一族の名を利用されたりしてはかなわん。

 あいつの事は忘れろ」

 そう言って・・・。


 父だけでなく、一族の誰一人として腰を上げる者はなかった。


 愚かにも私は、その時ようやく気付いたのだ。


 才能の有無で簡単に家族を切り捨てられる、

 我々一族の冷徹さに。


 そして、兄ニコルが私に向けてくれた優しさに。


 兄の手紙には常に、

 我々家族を気遣う気持ちが表れていた。


『父さんは元気にしているか』、

義母かあさんを大切にな』と。


 傷だらけの金貨と共に・・・。



 ――私は、街に行く事を決心した。


 兄の亡骸は、今もなおダンジョンの中にあるらしい。


 せめて、私の手で埋葬して、

 その魂に安らぎを与えてあげたい・・・。


 一族の家宝である、

 あらゆるものを収納できるアイテムボックスを持って、

 冒険者ギルドの門を叩いた。


 冒険者たちの話から、情報はすぐに揃った。


 ダンジョンの場所・・・、ドラゴンのいる階層・・・。



 ――私はダンジョンに潜った。


 ・・・謙遜などする気はない。


 私は、超一流の従魔士テイマーだ。


 私に近づく魔物は片っ端から従属化テイムしてやりながら、

 先へと進んだ。


 ゴブリンの群れ・・・。


 死霊術師ネクロマンサー・・・。


 ミノタウロス・・・。


 その他、数えきれないほどの魔物たち・・・。


 そしてようやく、

 ドラゴンのいる地下五階へと進んだ。


 ここまで来ると、

 魔物達も知能が高い種類が多くなる。


 私は、たまたま出遭ったオークの群れを従属化テイムし、

 彼らに道案内をさせた。


 オークは鼻が利く。


 私とを持つ人間を見つけるのなど、

 朝飯前だったろう。


 たとえ、それが死体でも・・・。


 

 ――私はニコルを発見した。


 その亡骸は、皮肉なほどにだった・・・。


【つづく】



 _________________________




『君』は読み進める……。


(いきなり過去話?


 というか……、誰だよお前?


 ニコルの弟だってのは分かるけど、

 シオンって……。


 パーティーの誰かが、偽名を使っていたって事か?


 文脈からすると、

 その可能性があるのは、

 後からパーティーに入ったノックだけだが……。


 う~ん分からん……。


 ああもう!

 さっさと続きを見よう!


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