一人が金づちで叩かれ一人になった


 ~~~~~~~~~~~~~


「今考えれば、最初からおかしな依頼だったんだ・・・」

 ウーゴは、目の前いるライラに言った。


 彼女は再びウーゴによって縛られ、

 ゴツゴツしたダンジョンの床にうずくまっている。


 腫れた頬と、口元から流れた血の跡・・・。


 二人の間に置かれたカンテラの灯りが、それを映し出す。


 ウーゴは続ける。


「領主を介した、謎の従魔士テイマーからの依頼。

 内容は、ミノタウロスの角の入手。

 報酬は、最低でも金貨百枚。

 内容の難易度にしても破格の金額だ。

 ・・・それもそのはずだ。

 依頼人は最初から、報酬を払う気などなかったんだ。

 あの依頼は、俺たち『金色こんじき六翼ろくよく』をダンジョンの中におびき寄せる罠だったんだ・・・!」


「そんな・・・」

 ライラは唖然としている。


 ウーゴは続ける。


「依頼達成が早いほど、報酬が上がるというのも上手い留め方だった。

 それがあったからこそ、仲間が死んでも俺たちは引き返さずに、

 ここまで来てしまったのだからな・・・。

 そうやってお前は・・・いや、お前たちは、皆を殺していったんだ。

 お前とノックは!」

 ウーゴは、ノックの剣をライラの前に叩きつけた。


 凄まじい金属音が、ダンジョンに響く。


「違います!

 わたしは・・・、何も知りません・・・」

 震えながら否定するライラ。


 ウーゴは続ける。


「ノックを『金色の六翼』に入れたのは数か月前だ。

 あいつは、大金と引き換えにパーティー加入を希望してきたな?

 奴は何故そうまでして、加入してきた?

 それは、お前の指示によるものだったんだ。

 あの時から、お前たちの計画は始まっていたんだ」


「・・・」

 ライラは、何も言わない。

 それどころか、口を挟むのも忘れて聞き入っている。


 ウーゴは続ける。


「俺は、聞いたことがある。

 この国には、貴族すら敬意を持って相対するほど、

 代々凄腕の従魔士テイマーの一族がいると・・・。

 今回の依頼を聞いた時、その噂が頭をかすめた。

 領主を依頼仲介に立てられるほどの従魔士テイマー・・・。

 そう・・・、ノックは剣士でなく従魔士テイマーだったんだ・・・。

 ノックこそが、依頼人であり、そして、俺たちを狙うだったんだ!」


「ノックが・・・従魔士テイマー・・・」

 ライラにも、ウーゴの言わんとする事がわかったようだ。


 ウーゴは続ける。


「それならば、あのゴブリンやアンデッドの群れにも合点がいく。

 あれは、ただの魔物の群れではない。

 ノックが従属化テイムした、お前たちの『兵隊』だったんだ。

 それをドワーフの詩に合わせて、タイミングよく俺たちの前に出現させたんだ」


「・・・・・・」


 ウーゴは続ける。


「そして・・・、俺たちを狙った理由・・・。

 やはり・・・、ニコルの事でなんだな?

 ニコルは・・・、あのドラゴンを従属化テイムしてみせた。

 そのおかげで・・・、俺たちは名を上げられた。

 ドラゴンを倒したパーティーとして。

 ニコルは、ただの荷物持ちポーターじゃなかった・・・。

 あいつは、従魔士テイマーだったんだ。

 そう、ノックと同じ・・・。

 ニコルは、弟がいると言っていた。

 それがノックだったんだな?

 だからこそ、大金を使ってパーティーに入ってきたんだ!

 全てはこのために!!

 お前と協力して、俺たちに恐怖を味合わせた上で、皆殺しにするために!!!!」

 そう叫ぶと、ウーゴは縛ったライラを引っ張り上げ、

 背中からその喉元に剣を突きつけた!


「だが、そうはいくか!

 俺は生き残るぞ!

 さあ、このまま喉をっ切られたくなければ、ノックを呼べ!

 どうせ近くに隠れているんだろう!?」


 わずかに刃を引かれたのか、

 ライラの喉に一筋の赤い線が付く。


「ひっ!!」


 ライラは、痛みと恐怖で再び失禁しながらも、

 必死でウーゴの言葉を否定する。


「ち、違う・・・。

 わたしは、何も知らない・・・。

 た、助けて・・・」


 その言葉を聞くと、

 ウーゴは焦りと憎しみが入り混じった形相でどなりつける。


「ふざけるな!

 本当に掻っ切るぞ!!

 くそっ、今頃になって、こんな事をたくらみやがって・・・!

 !!!

 そうだ、!!!!

 !!!!」

 叫びながら、グイグイと剣をライラの喉元に押し付けるウーゴ。


 既にその傷口からは、出血が広がっている。


「いやあっ!!

 お願い、助けて・・・!」

 ライラは泣きわめきながら、助けを求めてくる。


 だが、その声に応える者は、ここにはいない・・・。


「なのに、今さらあいつの弟を引き入れて復讐だと!?

 偽善者め・・・!

 弟にとっては、お前も仇の一人じゃないか!!

 そのお前に協力するなんて・・・。

 どうせ、俺たちに無理やりやらされたとでも言って、

 泣いてすり寄ったんだろう!?

 また、そのカラダを使って、たらしこんだんだな!?

 ニコルから俺に乗り換え、今度はそこからあいつの弟にか!?

 この売女ばいたが!!

 意地汚いメス豚がぁっ!!!!」

 ウーゴの狂気は止まらない。


 そのまま、ライラを殺してしまうのではないか、

 と思われたその時!


 フッ・・・、

 と二人を照らすカンテラの灯りに影が落ちる。


 それに気づいたウーゴが背後を振り向き、

 そして、愕然とした。


 そこには巨大な戦槌せんついを握った、

 一頭のミノタウロスが立っていた。


 ――何だ、こいつは・・・!?


「あ・・・」


 ウーゴが我に返る間もなく、

 その頭上から、ミノタウロスの戦槌が振り下ろされる。


 まるで卵のように、

 ウーゴはその頭をつぶされて死んだ・・・。


「ひぃっ・・・」

 縛られているライラは、

 その光景に背を向け、芋虫のように這って逃げようとする。


 だが、ミノタウロスは、ライラがカンテラの灯りの外まで行っても、

 追いかけようとはしない。


 そのまま、逆方向へ、

 静かに元来た暗闇の奥へ去っていった・・・。



 ――ライラがその事に気づいたのは、

 しばらくしてからだった。


 縄をほどくと、

 フラフラとウーゴの死体に近づいていく。


 カンテラを近づけ、

 その手を確認する。


「・・・やっぱり・・・」


 その手には、新しく胴に斜めの傷がついた、

 ドワーフの人形が握られていた・・・。


 それを見たライラは、

 静かにつぶやいた。


「『二人のドワーフがケンカを始めた

 一人が金づちで叩かれ一人になった』・・・」


【つづく】


 

 _________________________


『君』は読み進める……。


(ついに残り一人……!


 相変わらず文章に所々違和感があるけれど、無視だ無視!


 頭が重くなってこようが、

 もうこうなったら最後まで読まないわけにはいかないな……!

 よし……、次の回に行く前に、

 画面をスクロールして、

『応援ボタン』や『コメント』は入れてやろう。


 早く続き続き!)


















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