一人がカラカラに乾いて二人になった(上)


 ~~~~~~~~~~~~~


 三人を殺した人物は俺たちの中にいる・・・。


 ウーゴのその言葉に、他の二人は愕然としている。


「嘘・・・そんな・・・」

 ライラは拒絶するように首を振っている。


 そんな彼女を尻目に、

 モリアードが尋ねる。


「聞いてもいいかい、ウーゴ?

 君がそう結論付けた根拠を・・・」

 挑みかかるような視線だ。


 ウーゴは続けた。


「根拠は、あのドワーフの人形だ。

 俺たちは今まで、あの人形は三人が死ぬとき、自分の意思で握っていたものと考えていた。

 だが、そうでないとしたら?

 あの人形は、三人を殺した人物が殺害後に、その死体に握らせたものだとしたら?」


「そして、その人物はご丁寧に毎回その人形を回収して、新しい死体に握らせなおしてきた。

 それが可能なのは、死体を調べた我々三人しかいない。

 君はそう言いたいわけだ」

 モリアードが肩をすくめる。


 その仕草には幾分虚勢が感じられる。


「だけど、こうは考えられないかい?

 三人の死はいずれも不幸な事故だった。

 ノックはゴブリンの矢で、

 リリアンは階段から足を滑らせて、

 ギースはアンデッドの奇襲を受けて・・・。

 どの死体も、状況と照らし合わせて矛盾はなかったと思うけど?」


「だったら、三人が握っていたあの人形はどう説明する・・・?

 何故あの人形が、死んだ仲間の手から手へと渡り歩いているんだ?」

 と、反論するウーゴ。


「それは、君が言っていたじゃないか。

 ノックの持ち物だった人形をリリアンがくすねたんだって。

 そしてリリアンが死んだ時、今度はギースが形見として持ってきたんだ。

 ギースとリリアンが付き合っていたのは、皆知っているだろう?

 だからギースも最後の時、リリアンの形見として人形を握っていたんだ」

 と、あくまで偶然を主張するモリアード。


 だが、ウーゴは納得していない。


「それなら、何故ギースはリリアンの形見として、あの人形を選んだ?

 お前の言う通りなら、あれは元々ノックのものだった事になる。

 形見と言うならば、普通は死んだ人間の愛用品を選ぶものじゃないか。

 魔術師のリリアンは、杖も持っていたのに・・・」


「それは・・・」

 言われて少々考え込むモリアード。


 だが、すぐに閃いたように、


「それは、きっとリリアンが死ぬとき握っていたものだからじゃないかな。

 つまり、あの人形はリリアンにとって、それほどお気に入りだったんだ、

 とギースはそう考えたんだよ」

 モリアードの主張に、今度はウーゴが黙り込む。


 そして、ややためらいがちに、


「だったら・・・、ギースが握っていた時に初めて、あの人形の喉に穴が開いていたのは何故だ?

 あれはどう見ても、偶然ついた傷じゃないぞ・・・」

 と言った。


「あれは・・・そう、魔物につけられたものじゃないかな。

 ギースがアンデッドに襲われた時に・・・」

 段々と、モリアードの言い分は苦しくなっていく。


 それを見つめるウーゴの顔がけわしくなる。


「モリアード、さっきからお前は、反論ばかりしてくるな。

 お前にとって、俺の主張を認めるのがまずいかのように・・・」


「それは・・・どういう意味だい?」


 二人の雰囲気が、戻れないところへ向かおうとしたその時、


「あの・・・」

 それまで黙っていたライラが、口をはさんできた。


「認めたくないけれど・・・、

 わたしもウーゴの説が正しいと思います・・・」


「ライラ!」

 モリアードは、信じられないといった風に声を上げる。


 無理もない。

 彼女は先ほどまで、さんざん呪いだなんだと怯えていたのだから。


 だが、ライラは続ける。


「何度か言いましたけど・・・、

 これまでの三人の死に方は、わたしが知っているうたの・・・童謡どうようの歌詞にそっくりなんです・・・。


『六人のドワーフが洞窟どうくつにもぐった

 一人がうしろから突き飛ばされ五人になった

 

 五人のドワーフが奥へと進んだ

 一人が転んで四人になった


 四人のドワーフが道に迷った

 一人がはぐれて三人になった』・・・。


 そして三人とも、童謡に出てくるドワーフの人形を握って死んでいました。

 それと・・・、最後にもう一つ・・・」


 そこでライラは続きを言いかねた。


 ここでは言い出しづらいのだろう。


 だが、やがて覚悟を決めたかのように、

 ライラは言った。


「ノックさんが握っていた時は傷一つなかった人形が、

 リリアンさんの握っていた時はこげていた事・・・。

 そして・・・、ギースさんが握っていた時は、さらにのどに傷がついていた事・・・。

 こんな細工は・・・、を知っているわたし達の誰かにしかできません・・・」


「ライラ、だからその傷は偶然・・・」

「確かに!」

 モリアードの言葉をさえぎるように、ライラは声を張り上げた。


「確かに・・・、一つだけなら偶然と言えるかもしれません・・・。

 でも・・・、三人が詩の歌詞とそっくりな死に方をしたこと・・・。

 三人の手に、詩に出てくるドワーフの人形があった事・・・。

 そして・・・、人形にの事を思い出させるような傷がつけられた事・・・。

 偶然は・・・、三つも重なったりしません・・・」


「・・・・・・」


 ライラの主張に、他の二人も黙り込んだ。


 皆、完全に結論付けたのだ。


 この状況を作り出せるのは、ここにいる三人だけなのだと・・・。



【つづく】



 _________________________


『君』は読み進める……。


(う~ん……、ちょっとくどくないか?


 散々言い合って、前回のウーゴの主張が正しかったで終わりとか……。


『ここにいる三人の中にしかいないと結論付けた』って、何か回りくどい言い回しだな……。


 こういう表現が好きなのかな、作者は……?


 ――まあとりあえず、次の回に行く前に、

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