一人が転んで四人になった


 ~~~~~~~~~~~~~


 五人は、ノックの死体が握った人形を見たまま立ち尽くしている。


 しばらくしてギースが、ややためらいながら人形を手に取って見る。


「何だよ・・・これ。

 ドワーフの人形だよな・・・」


「どうしてノックは、こんなものを握って死んだの・・・?」

 と、当然の疑問を口にするリリアン。


 だが、その問いに答える者はいない。


「とにかく、このままダンジョンの中でじっとしているわけにはいかない・・・」

 と、リーダーのウーゴが言った。


「いったん外に出てノックを弔うか・・・、

 それとも、このまま先に進むか・・・」


「そんな・・・!

 ノックをここに残していけるわけないでしょう」

 と、ライラ。


「いや、だが・・・、今から引き返して弔うとなると、

 少なくとも再開は数日後になってしまう・・・」


「ああ、確かギルドの受付が言っていたね。

 依頼人はなるべく早くミノタウロスの角が欲しいから、

 依頼達成が早いほど、報酬を上乗せするそうだ、と・・・」

 モリアードにも、ウーゴの懸念している事が分かったようだ。


「考えてみればノックは、我々五人と違って新入りだしね。

 そんな関係の薄い相手のために、より大金を手にするチャンスを棒に振るのはごめんだね」


「そんな・・・、モリアードさん・・・」

 ライラは信じられないといった顔で、モリアードを見る。


「・・・ここは多数決でいこう。

 先に進むほうに賛成の者は手を上げろ」

 と、ウーゴ。


 五人の手が上がった・・・。


「決まりだな。

 さあ、また敵が出る前に下へ向かおう」

 と、まだためらっているライラをせかすように、

 ウーゴは先を促した。



 ~~~~~~~~~~~~~


 五人になった『金色こんじき六翼ろくよく』は、ダンジョンの地下三階まで来た。


「何だ、ずいぶん入り組んだ道だな」


「近道ですよ。

 今日一日で依頼を終わらせるためには、

 出来るだけ早く進まないと・・・」


 凹凸の激しい岩肌のせいで、

 カンテラの灯りが所々さえぎられる。


「歩きにくいわね~・・・。

 転んだらどうしてくれるのよ」

 と、文句を言うリリアンの言葉に、

 ライラがおびえたように振り向く。


「転ぶ・・・」


 その過剰な反応が気になったのか、


「どうしたライラ?」

 と、ウーゴが尋ねる。


「あのギルドに飾ってある詩・・・、

 あの歌詞が・・・」


「ああ、さっき話していた童謡の事か」


「確か、ダンジョンに潜る冒険者への注意喚起とか言ってたわよね。

 それが何?」

 気になってリリアンも尋ねる。


「さっき話した歌詞の続き・・・、

 次の一文が、

『五人のドワーフが奥へと進んだ

 一人が転んで四人になった』なんです・・・」


「・・・・・・」

 皆、驚いたように足を止めた。


 そして、ある事に気づいたようだ。


「ドワーフ・・・」


「ノックが握っていたのも、ドワーフの人形だったよな・・・」


「そして、歌詞の内容にそっくりな死に方を・・・」


「偶然でしょうか・・・?

 それとも・・・」


「ダンジョンの・・・呪い?」


 その言葉に一番過剰に反応したのはリリアンだった。


「冗談じゃないわよ!

 呪いなんてありえないものにびびってないで、さっさと先に進んでよ!」

 と、最後尾の彼女は、皆をむりやり前に進める。


 何か得も言われぬ不安を感じながらも、

 先へ進む五人。


 相変わらず灯りは通りにくい。


 斥候スカウトのギースが先行して進み、

 彼の通った道に沿って全員が、足元に集中しながら黙々と歩く。


 やがて道は開け、

 広い空間へと出た。


 すぐ先の壁向こうには、下への階段が見える。


「なるほど、確かに近道だったな」


「前の時はここまで来るのに、倍くらいの時間がかかりましたからね」


「苦労したおかげで、随分と時間を短縮できたよ」


「よし!

 早く降りようぜ!」

 と、さっさと階段へと向かうギース。


 だが、他の四人の息はまだ荒い。


 リリアンは既に水筒を空にしている。


「幸い階段付近に魔物は現れない。

 皆、息を整えて回復した者から下へ降りよう」

 というウーゴの意見に皆が同意する。


 ギースは既に階段を降り始めている。


 続いてウーゴが。


 モリアード、ライラが降りてきた時には、

 先の二人は既に待ちくたびれていた。


「遅い!

 二人とももっと体力つけろよ」


「す、すみません」


「そのセリフはリリアンに言ってくれ。

 一番遅いのは彼女なのだから」

 と、モリアード。


「・・・リリアンはまだ来ないのか」


「ったく、何やってんだあいつ?」


 そのまましばらく待ってみる。


 だが、リリアンは一向に壁向こうの階段から現れない・・・。


「おかしい・・・。

 いくら何でも遅すぎるぞ」


「行ってみよう!」


 先ほど降りてきたばかりの階段を、四人は駆け上がっていく。


 その長い階段の中間あたりの位置に、リリアンは倒れていた。


 まるで、つまづいて頭から階段を転げ落ちたように・・・。


「リリアン!」

 ギースが慌てて、リリアンを抱え上げる。


 だが、抱えたその頭は、人形のようにガクンと折れた。


 額から流れたであろう血が、彼女の顔面を赤く染めている。


「ライラ、治療を!」


「は、はいっ!」

 ウーゴに言われて、急いで駆け寄るライラ。


 だが、治療は無意味だった。


「駄目です・・・もう・・・」

 ライラのその言葉に、リリアンを抱えていたギースは、


「そんな・・・」

 と、絶望に叩き落されたような顔になる。


 そこへモリアードがカンテラをかざしながら、

「リリアンの手、何か握っているぞ」


「まさか・・・」

 と、つぶやくウーゴ。


 リリアンが握っていたのは、

 小さなドワーフの人形だった。


「ドワーフ・・・」


「ノックと同じ人形・・・」


「でも、何か変だな・・・」

 と、モリアードが人形にカンテラを当てる。


「焼け焦げているようだぞ、このドワーフ・・・」


「そんな・・・、それってまさか・・・」

 ライラは恐怖に青ざめた顔で言った。


「ダンジョンの・・・ニコルの呪い・・・?」


【つづく】



 _________________________


『君』は読み進める……。


(ほうほう、これは……。


 こいつら、何かこんな目に遭う理由に心当たりがあるのか。


 ニコルって、確か死んだ元メンバーだよな。


 その呪いという事は、つまり……

 

 

 先が気になってきた事だし、

 このまま画面をスクロールして、

『応援ボタン』や『コメント』で評価をさせてもらうとするか。


 ド素人の描いた作品にしては、割と楽しませてもらえているからな。

 礼としてくれてやろう……)





















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