わたくし、ラスボスと対決ですわ!

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ここですわね」


 ただならぬ邪気を追って、わたくし達は謁見の間に足を踏み入れました。


 そこには、すっかり頭髪が薄くなって、のびたクソ国王が。


 さらにエスイクス王子に加え、

 彼にマウント殴打を食らわせている、ヒルルの姿がありましたわ。


「はぐっ、た、助け・・・、ひゃべっ・・・!」

 ボコボコにされながら、失禁されているエスイクス王子。


 さすがに、少々あわれですわね・・・。


「おやめなさい、ヒルル!

 いえ・・・、あなた、ヒルルではありませんわね」

 わたくしのその言葉に、

『彼女』はエスイクス王子をにするのを止め、

 こちらを向かれました。


「なるほど、お前が今の『聖女』か。

 さきほどの『攻めの結界』は危なかったよ・・・」


「ヒルルの身体を乗っ取っている、という認識でよろしいかしら。

 あなた、一体何者です?」

 わたくしの問いに、『彼女』は答えました。


「二十二代目『聖女』カテラ、それが生前の名だ。

 お前が何代目かは知らないがな」


 え~と、わたくしは・・・何代目でしたっけ?


「二十二・・・、百年近くも前ではないか!」

 わたくしをかばうように立っていたシーケン様が驚いておりますわ。


 まあ、そんなに昔の『聖女』ですの・・・。


「カテラ様ですわね。

 わたくしは隣国ボンバイエのフローレスと申します」

 そう言って、わたくしはカーテシーを取りました。


「それで、何故このような事を?

 この王国に恨みでも?」


「わたしは、当時の王子に殺された。

 わたしは聖女にふさわしくない、

 所作が無様で婚約者にふさわしくない、

 そんな理由でな」

 悔しそうに語る『彼女』のその言葉に、

 わたくし心が痛みました。


(似ていますわ、わたくしと・・・。

 でも・・・)


「カテラ様。

 あなたの悲劇には心から同情いたしますわ。

 ですが、あなたの仇は既にお墓の下。

 今の王族は無関係ではありませんか?」


「ほう・・・、ならば今の王族は、『聖女』を大切にするのか?

 勝手に婚約者に任命して、自分たちの利益のために散々利用したあげく、邪魔になったら排除する・・・、そういう面などありえないと言うのか?」


「それは・・・」


「やはりな・・・。

 わたしの頃から、この国の王族共は何も変わっていない。

 自身の主張はまかり通って当然、という傲慢さを常に継承し続けている」

 そう言って、カテラ様はクソ国王やエスイクス王子を睨まれました。



「ここは、権力の行き止まりだ・・・!」



「・・・」

 そんなカテラ様を見て、わたくしやり切れなくなりました。


 ですが・・・、


「それでも、わたくしはあなたを止めます。

 王族のためではなく、国民のために・・・!」


「・・・いいだろう、始めよう」

 そう言って、カテラ様は拳をつくって構えられました。


 その拳骨げんこつから、かつてない『力』を感じますわ。


 シーケン様もそれを感じ取ったのか、

 わたくしの前に出ました。


「フローレス、僕が時間を稼ぐ。

 その間に君は・・・」


「ええ、『力』を溜めるまでお願いしますわ」



 そして、戦いが始まりました・・・!


 カテラ様の繰り出す拳を、

 シーケン様は何とか剣でしのいでおりますが・・・


「どうした?

 何故反撃してこない?」


「くっ・・・、その身体は君のものではないのだろう?

 なら、傷つけるわけにはいかない・・・!」


「ふん、舐められたものだな。

 だがその余裕・・・、いつまでもつかな!」

 そう言って、懐に飛び込むカテラ様。


 至近距離から放たれたその左拳が、

 的確にシーケン様の右わき腹にヒットしましたわ!


「ぐ・・・はっ・・・」


「とどめだっ!」

 カテラ様はそのまま返す刀で、シーケン様の左顎を打ちぬこうとしました!


 ですが、間一髪!


 シーケン様は低い姿勢で、カテラ様に脇の下から抱きついて、

 その拳を封じてしまいました!


 間違いなく、おっぱいが顔にあたっておりますわ!!


「くっ・・・放せ、不埒ふらちな・・・!」


 ええ、わたくしもそう思いますわ!


 ・・・戦闘中でなければ。


「今だ、フローレス!!」


「はい、ですわ!!」


 シーケン様の合図とともに、

 わたくし二人に向かって飛び出しました!


 そのまま、地面を蹴って空中におどり出て・・・。


「なっ・・・」

 シーケン様の背中ごしに、

 カテラ様の驚く顔が見えますわ。


 カテラ様・・・、

 先日、そして今回と、二度にわたってわたくしの『結界』を防いだ方・・・。


 ならば直接、ですわ!


 飛び上がったわたくしは、

 両の足裏をカテラ様の顔面に向けて、

 思いっっ切り叩き込んでやりましたわっ!!


「ふぎっ!!!!」


 その瞬間!


 わたくしの足の裏に、

 相手の鼻骨を砕き、唇をつぶし、前歯を根こそぎ持っていく感触が、確かに伝わってきましたわ・・・。


【つづく、ですわ】




 ________________


『君』は読み進める……。


(すごいな、この主人公……。


 彼氏が敵の女子を傷つけないように戦っていたのに、

 躊躇なくドロップキックで顔面を粉砕するとか……。


 ま、個人的にはムカつくヒルルの顔がつぶれてざまぁだけどな。


 カテラ諸共もろともっていうのが少々気になるが……。


 一応、カタルシスをありがとね、

 作者(きっと女子!)のジョセフィーネちゃん!


 『応援ボタン』や『コメント』で評価するからね!)




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