わたくしをどうにかしようと、クソ王国も必死ですわね・・・。

 ★ ★ ★ ★ ★


 半年前、理不尽に『聖女』フローレスを追放した王国。


 その国王が今、玉座の前で動揺していた。


(な、何なのだ、この威圧感は・・・?)


 それは、今自分の目の前でひざを折っている、

 隣国ボンバイエからの特使たちへ対してのものだった。


 ボンバイエ王国辺境伯シーケン。


 その専属騎士アントニー。


 そして・・・、


 我が国とたもとを分かち、

 今回ボンバイエからの救援としてやってきた、

 元『聖女』フローレス。


(フローレス・・・、

 何とか力づくでも、我が国に引き戻すつもりだったのだが・・・)

 王は今、それが不可能な事が分かった。


 彼女の両隣にたたずむ二人、

 シーケンとアントニー・・・。


 彼らから漂うすさまじい威圧感に、

 王のみならず、その場の王族・重鎮たちも震えを抑えるのがやっとであった。


 さらに外には、おそらく二人に匹敵する力を持ったボンバイエの兵たちが、

 百人以上待機しているのだ。


『フローレスに手を出したら・・・分かっているな?』

 声に出さずとも、彼らは皆そう言っているのだ。


(こ、こやつらは一体・・・)


 とにかく、彼ら相手に武力行使は自殺行為だ・・・。


 王はともかく、何でもないふりをしてフローレスに話しかけた。


「よくぞ参った、『聖女』フローレスよ。

 長旅でさぞや疲れたであろう。

 食事と湯あみの用意ができている。

 シーケン辺境伯や騎士の者と共に、

 まずは疲れを癒してもらいたい」


 王のその言葉を、

 フローレスの隣にいるシーケンが、


「いえ、せっかくですが、

 我々は長く留まる気はありません。

 フローレスが結界を張り次第、

 すぐにボンバイエへ戻らせてください」

 と、バッサリと斬り捨てる。


 そんなシーケンの態度に、周りで、


「なっ、無礼な・・・!」


「たかがボンバイエの一領主ごときが、我が王に向かって!」


「調子にのりおって、このガキ・・・!」


 などと、声が上がったが、

 アントニーの一睨ひとにらみで、

 皆「ひぃっ・・・」と、すくみ上った。


 中には尻もちをついて震えている者もいる。


 そんな光景を見て王は、


「そ、そうか分かった。

 それでは、さっそく大聖堂へ・・・」

 と、促したが、


「結構です。

 ここで済ませてしまいますわ」

 フローレスはそう言って、

 おもむろにその場で靴を脱ぎだした。


「き、貴様!

 王の前で何を・・・」

 と、騒ぐ重鎮たち。


 今度はアントニーにシーケンが加わり、

 威圧を放って黙らせると、

 威力が強すぎたのか、泡を吹いて気絶する者、

 失禁して震える者など散々であった。


 その様を見ても、

 フローレスはそのまま、


「静かになりましたわね。

 では・・・」

 そう言って、腰を落とし、片足を高々と振り上げ

 四股を踏んだ!


 その瞬間!


 踏みつけた足元を中心に光が広がっただけでなく、

 ビシビシと床に亀裂が走り、

 彼女を中心に謁見の間に、巨大な円状のひび割れができたのである。


「あら・・・」

 不思議そうに、頬に手をあてるフローレス。


 それ以上に驚愕したのは王たちであった。


「な、何を、フローレス・・・」

 かろうじて問う王に、

 フローレスは若干申し訳なさそうに言った。


「申し訳ありません。

 どうやらこのお城全体に、邪気が広がっているようですわ」


「じゃ、邪気・・・?」


「ええ、今わたくしの放った『力』は、邪気を払うものですから。

 それで床が砕けたという事は、何か邪な空気が漂っているという事でしょう」


「それは・・・」

 単にお前が馬鹿力で踏み抜いたのではないか!?

 と、とがめかけて、危うく踏みとどまった。


「ですが、結界は張り終えました。

 これでもう安心ですわ」


「そ、そうか。

 ご苦労であった。

 国の王として、礼を言う」


「どういたしまして。

 では、これで失礼しますわ」

 カーテシーを一つして、

 去ろうとするフローレスを、

 王が慌てて止める。


「ま、待て、フローレス。

 もう一度この国の『聖女』として、

 我らに仕える気はないか・・・?」


「ありえませんわ」

 足も止めずに外へ出ようとする。


 だが、その瞬間、

 バン!と、その扉は外から開かれた。


 そして、そこにいたのは、


「エスイクス様・・・」


「やあ、久しぶりだねフローレス」

 かつて一方的に婚約破棄を言い渡した相手に、

 王子エスイクスは実に気さくに声をかけた。


 だが、フローレスは怒りの顔も見せずに、

 静かにカーテシーで応じた。


「そうですわね。

 わたくし達、国へ帰りますので、

 そこを通していただけますか?」


「おいおい、何を言っているんだいフローレス?

 君の国はここじゃないか。

 あの婚約破棄は取り消してあげるから、

 いい加減意地を張るのはやめて戻ってきたらどうだい?」


 王子のその言葉に、

 言われたフローレスは表情が消え、

 その兄アントニーは怒りの表情となり、

 そしてシーケンは・・・、

 静かに相手だけに聴こえるようにつぶやいた。


「どうやら、あなたのつらは、

 皮だけで出来ているようだな・・・」


「・・・・・・。

 なっ・・・!」

 意味の分かったエスイクスは、

 シーケンをにらみつけた。


 だが、シーケンはエスイクスを見ようともせず、

 後ろを振り返り、王に向かって言った。


「王よ、あなたのご子息がこう申されていますが、

 あなたも同意見で?」


 王は慌てて、

「い、いや、とんでもない!

 愚息はまだ幼いため、そのようなわがままを言っているのだ!」


「父上、何を言っているのですか!?

 そもそも王族たる我々の命令を無視して、

 隣国に居続けるフローレスをどうしてお叱りにならないのです!?」


「黙れ、エスイクス!

 誰か、早くエスイクスを連れていけ!!」


 その後ギャーギャーわめきながら、

 兵士たちに引きずられていくエスイクスと、

 それを平謝りする王をしり目に、

 フローレス達は無事、ボンバイエへとしたのである。



【つづく、ですわ】




 _____________



『君』は読み進める……。


(まずは、ざまぁ第一段階といったところか……。


 王子のクズっぷりが、うまいことカタルシスを増幅させている。


 いいぞ・・・、もっともっとひどい目にあえばいい。


 次はNTR女ヒルルのざまぁ描写も見たいものだ。


 頑張ってね、作者(多分女子)のジョセフィーネちゃん。


『応援ボタン』や『コメント』でしっかり評価するからね)
























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