わたくし、辺境ライフを満喫中ですわ!


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 わたくし達を追放したクソ王国ですが、

 何だか大変なことになっているようですわね。


 辺境伯・・・いえ、シーケン様が、わたくしのお父様とお話されていたのをたまたま・・・、

 ええ、本当にたまたま聞いてしまってのです。


 そして後日、シーケン様から言われましたわ。


「君を追放した、あちらの国王から打診があった。

 改めて君を『聖女』として迎えたい、とね」


「何を今さら・・・!」

 一緒に聞いていたアントニーお兄様は、激しくいきどおりました。


 父と母は、

 何も言わず難しい顔をされていますわ。


 これは・・・、わたくしの意志に任せる、ということでしょうか?


 でしたら・・・、


「シーケン様。

 シーケン様はどう思われます?」

 含みを持たせて、わたくしは問いました。


 すると、彼はしばらくわたくしを見つめ、

 やがておっしゃいました。


「辺境伯の立場としては・・・、

 我が国との友好のためにも、ここで余計な波風をたてるべきではないと思う。

 でも・・・」


「でも?」


「僕は、君を手放したくない」

 そう言って、困ったような笑顔を浮かべられましたわ。


 もう・・・、

 本当にこの人ったら・・・!


「でしたら、わたくしは戻りませんわ。

 婚約者であるあなたのご希望ですもの」


「フローレス・・・」


「それに、わたくし今、毎日がとても楽しくて充実しているのです。

 この生活を捨てて、あのクソ・・・いえ、あの国へ戻るなど、

 ゴブリンの善行くらいありえませんわ!」

 わたくし、家族や婚約者の前で、

 はっきりと言ってやりましたわ!



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 実際、ここでの生活は最高です。


 シーケン様と一緒に習う剣術のお稽古も、

 勉学も、

 村の皆さんに混ざって畑を耕すのも、

 家畜のお世話も、

 子供たちと一緒に遊ぶ時間も、

 全てが楽しく、充実しておりますわ。



 ――ちなみに、わたくしが『聖女の力』を持つという事は、

 あっさり村の皆さんにバレてしまいましたわ。


 それは、この村恒例の祭事、

 ブドウの収穫祭の時でした。


 ワインを造るためのブドウ踏みはうら若き乙女の役目・・・、

 当然わたくしも参加いたしましたわ。


 シーケン様や村の皆さんが奏でる素朴な演奏と歌声に合わせて、

 村娘の皆さんと一緒に、ブドウ樽の中を楽しく周り続けて・・・。


 ――その時、周りの方々が騒ぎ始めたのです。


「おい、何か樽が光っていないか?」


「本当だ、昼間だしブドウの反射か?」


「いや、あれは何ていうか・・・、

 もっとこう神々しいっていうか・・・」


 つぶしたブドウの果汁は樽に入れられましたが、

 その一部がわたくし達乙女に振舞われました。


 美味しい・・・!

 しぼりたて、果汁十割生ジュースですわ!


 ですが、周りの乙女たちの反応は、

 それ以上のものでした。


「何これ!?

 すごく美味しい・・・!」


「本当!

 あたし、こんなの初めて飲んだ!」


「ブドウ踏みでヘトヘトだったのに、

 何かこのジュース飲んだら、疲れが吹き飛んだよ!」


「わたしも、すごく元気が出てきた・・・!」


 そんな乙女たちを見ていた周りの皆さんも、


「なあ、あの子たち肌ツヤが良くなっていないか・・・?」


「ああ、何かキラキラしているような・・・」


「あの子、さっきまでソバカスがあったよな?

 いつの間にかそれが消えて・・・」


 それを見ていたシーケン様。


 わたし達と同じようにジュースを飲まれていたのですが、

 後片付けようとしている村人さん達を呼び止めました。


「待ってくれ!

 そのブドウの踏みカスを捨てずに、

 皆に振舞ってくれ」


 怪訝な顔をされる皆さんですが、

 言われた通りわたくし達がつぶしたブドウを口にしました。


「ドュフフ・・・、女の子たちの足で踏んだブドウ・・・」

 などという声も聴こえてきますが、

 気にしないことにしますわ・・・。


 すると、

 あちこちから驚きの声が・・・。


「むほっ、美味いでゲス!」


「残りカスの果肉なのに!」


「それだけじゃない・・・。

 気のせいか身体の調子が良くなってきたぞ・・・!」


「ワシもじゃ!

 腰の痛みが引いてきたぞい!」


 ここまで騒がれて、

 気づかないはずがありませんわ・・・。


 どうやら原因は、

 わたくしの足の『力』によるものでしょう。


 今まで、結界や治癒にしか『聖女の力』を使ったことがないので気づかなかったのですが、こんな使い道もあったのですわね。



 ――この後、シーケン様はわたくしに断りを入れて、

 村の皆さんに『聖女の力』を公表されました。


 ですが、それでわたくしが変に持ち上げられる事も、

 逆に『足』の力なんて・・・とさげすまれる事もなく、

 皆さん、それ以降も親しく接してくださっているのです。


 ただ呼び方が『聖女様』に変わったくらいで。


 それはクソ王国での呼称とは違い、

 ただただ親しみを込めてのもの・・・。


 そして今日も・・・。


「すまねえ、屋根の修理をしていたら、

 ハシゴから落ちて怪我を・・・。

 だから、

 踏んでください聖女様!」


【つづく、ですわ】



 ________________



『君』は読み進める……。


(ブドウ踏みか。


 ファンタジーでは例外なく女の子がやるんだよな。


 現実では、普通にオッサンとかも踏むらしいが……。


 身体の調子が整うジュースか……、欲しいなぁ……。


 作者ジョセフィーネも、ブドウジュースが好きなのだろうか……。


 ジュースが好きなら、年も若い女の子かもしれないな、うん。


 ――そんなジュース好きな作者の描いたこの物語……、

『応援ボタン』や『コメント』でしっかり評価してあげよう。


 頑張ってね、ジョセフィーネちゃん……)



















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