わたくしを追放したクソ王国、なかなか大変のようですわね。
★ ★ ★ ★ ★
一方そのころ、
フローレスを追放した側の王国では・・・。
「何という事だ・・・!」
王子エスイクスの父、
すなわち国王は会議の場で頭を抱えていた。
「新しく現れた『聖女』が、
力を失ってしまうとは・・・!」
周りの重鎮達も動揺している。
「一体何が原因なのでしょう・・・。
先日、大聖堂において確かに『力』が確認されたというのに・・・」
「それが日を追うごとに少しずつ衰えていって・・・」
彼らの言っている『聖女』とは、
王子エスイクスがフローレスから乗り換えた相手、
ヒルルの事である。
エスイクスやヒルルの通う学院では、
授業の一環として、大聖堂で祈る時間がある。
そこで司教達が、祈る生徒たちの中から『聖女の力』を放つ、
ヒルルの存在を認め、すぐに王家にも報告されたのだ。
だが・・・、
それはヒルル本人の『力』ではなく、
実はフローレスのものだったのだ。
――それより
ヒルルが自業自得で階段から落ちて命も危ない状況となり、
それをフローレスが『聖女の力』を限界まで行使して救った、
という話は以前にも語ったが・・・。
その時に注がれた『力』が、
ヒルルの身体にしばらくの間残っていて、
それを周りがヒルル本人のものだと誤解してしまったのである。
だが、この真実は誰も知らない。
周りはもちろん、
ヒルル本人でさえ自分が『聖女の力』に目覚めたと信じ込んでしまったのだ。
新しい『聖女』の誕生・・・!
そのため、彼らはあっさりフローレスを追放したのだ。
たおやかな美の象徴たるべき『聖女』らしからぬ、
無様なやり方でしか国を守る結界を張れないフローレスを・・・。
「王よ、いかがいたしましょうか。
もうすぐ結界を張りなおす時期・・・」
「今の結界が消える前に、何とかヒルル様に『力』を取り戻していただかねば!」
「万一、結界を失う事態におちいったならば・・・、
我が国は、魔物どもの脅威にさらされる事に・・・」
「むう・・・」
焦る重鎮達の言葉に、王は答えようがなかった。
そんな王の様子に、
周りの目も段々と冷たくなっていく。
「――だいたい、王子が婚約破棄などされなければ・・・」
誰かがそうつぶやいたのを皮切りに、
醜い責任転嫁が始まった。
「たしかに・・・。
王子があのような行動を取られなければ、
誰もあのフローレスを追放しようなどとは思わなかったはず・・・」
「今にして思えば、あのパーティーでも、
さもフローレスがヒルル様に陰湿なイジメを行っていたように、
仕向けていたような気がするのだが・・・」
「そう、あの話がなければ、
我々もきっと、王子の発言をいさめていたはず」
「うむ、こぞってフローレス追放に賛成することもなかったのに・・・!」
小声のつもりのようだが、
彼らの言葉はしっかり王の耳にも入っていた。
だが、王は何も言わなかった。
彼自身、エスイクスの行動を許した一人なのだから・・・。
――その後、王は王子エスイクスの愚行を厳しく叱り、
重鎮達も非難の目をもって、王子を迎えた。
そんな周りの手のひら返しを、
理不尽と感じたエスイクス。
すっかり気持ちのささくれた彼は、
その悪感情をヒルルへの怒りという形で発散させた。
城内に用意されたヒルルの部屋で、
二人は滑稽に言い争った。
「この偽聖女め!
よくもだましてくれたな!」
「そんな・・・、エスイクス様、
わたしは何も・・・」
「黙れ!!
お前のせいで僕は、僕は・・・!」
「ひどい・・・!
わたしが一体何を・・・」
「お前が僕に言い寄ってこなければ、
本物の『聖女』を追放などしなかったのに・・・」
「何をおっしゃるのですか!
本物の『聖女』はこのわたしです!
あんな地味な成り上がり女が次期女王になるなど、
図々しいにもほどがありますわ!」
「・・・なるほど。
そうだったのか」
エスイクスは気づいた。
この女、ヒルルは自分のことが本気で好きだったのではない。
ただ自分の妃となることで、
女王の座につきたかっただけなのだ、と・・・。
エスイクスは部屋から出ていこうと扉を開けて、
最後に捨て台詞のように言った。
「結界が消えるまでに、『聖女の力』を見せてみろ。
出来なければ、今度はお前を追放する」
「そんな・・・!
待って、エスイクス様・・・」
慌てて追いすがろうとするヒルル。
だが、エスイクスは聞く耳を持たず、
そのまま扉は乱暴に閉められた・・・。
【つづく、ですわ】
___________________
『君』は読み進める……。
(そうそう、イジメっ子はちゃんと痛い目にあわないとね。
物語の中でも、現実でも……。
もしかして、作者もイジメを受けたことがあるのだろうか。
だとしたら……、本当に可哀そうだ。
せめてこうやって描くことで、その傷が癒されてほしい。
――そんな作者の描いたこの物語……、
『応援ボタン』や『コメント』でしっかり評価してあげよう。
この応援で作者が癒されるように……)
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