わたくし、隣国へ移りましたわ。(202308加筆)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
家族はわたくしを責めたりしませんでした。
父も母も、そして兄も、
そろってわたくしを慰めてくださり、
特にアントニ-お兄様などは、
「あのバカ王子・・・!
あいつの頬をひっぱたいてやりたかったよ」
とまで言ってくださいました。
お兄様は、わたくしや王子よりも一回り歳の離れたイケメンで、王国でも指折りの剣士として名を馳せておられました。
わたくしの醜聞により、その名誉も消えてしまったというのに、
本当に優しいお兄様ですわ・・・。
ともあれ、
国外追放となったわたくし達家族は、
隣国ボンバイエ王国を頼ることに致しました。
隣国という事で我が国・・・、
これからはクソ王国と呼ぶことにしますわ!
とは交流も深く、
わたくし達家族はそのツテを頼って、
ボンバイエ王国にある、緑豊かな辺境に移住が決まりました。
馬車で向かった先は、
よく手入れされた果実の木々や田畑が、澄んだ水や空気の存在を証明してくれるような、
牧歌的かつ生気溢れる村でしたわ。
おまけに、この国の王都が近いせいか、
村人の皆さんもその住居も、
みな洗練さを感じられるものですし。
「ブドウ畑が多いのですわね」
「この村のブドウでつくるワインは、
王都でも有名らしいよ」
「ワイン・・・。
早く飲んでみたいですわ」
「あらあら、
フローレスは気が早いわね」
馬車から眺める景色を話題に、
わたくし達家族の会話は楽しく続きました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ようこそ、我が屋敷へ。
辺境伯のシーケンです」
そう自己紹介されたのは、
アントニーお兄様とわたくしの、ちょうど間くらいのお年でしょうか。
(この歳で辺境伯・・・)
何か裏がありそうですが・・・、
余計な詮索はいけませんわね。
何しろ、わたくし達家族はこれから、この屋敷でお世話になるのですから。
何はともあれ、
皆で挨拶とお礼ですわ。
「この度は、国を追われた私どもを受け入れてくださった事に心から感謝を
「これからは辺境伯、並びに貴国を守る剣となり手足となり、何たらかんたら・・・」
「道中、御領地を拝見致しましたが、
本当に素晴らしいところですわね。
これもひとえに、辺境伯の手腕とお人柄によるものと、あーだこーだ・・・」
と、言ったお父様方のお言葉の後に、
わたくしも、
「クソ・・・いえ、元隣国聖女のフローレスです。
未熟なわたくしめでございますが、
この『力』がシーケン辺境伯、ひいてはボンバイエ王国発展の一助となりますれば、幸いですわ」
と、自分なりに精一杯の挨拶を致しました。
「聖女フローレス。
またこうしてお会いできるとは・・・」
と、シーケン辺境伯。
あれあれ?
どこかでお会いしましたかしら?
するとシーケン様は、目の前に来られ、
何とその場で膝をつかれました!
爽やかイケメンに上目遣いに見上げられ、
そのまま手まで取られて・・・、
わたくし少々ドキがムネムネしてしまいますわ。
「あ、あの・・・、
辺境伯?」
「シーケンで構いません。
聖女フローレス」
「・・・はい」
「――いえ、あなたが聖女であろうとなかろうと、
関係ありません」
「え・・・?」
「改めて、
麗しき令嬢フローレスよ」
「はい、シーケン様」
「私と、婚約して頂けませんか?」
「喜んで・・・!」
【つづく、ですわ】
___________________
『君』は読み進める……。
(若き辺境伯……、
なるほど、こいつが白馬の王子様キャラか。
主人公を『聖女』という肩書ではなく、
一人の女子として見ようとする態度は好感がもてるな。
ギャルゲーでも、アイドルや深窓の令嬢といったヒロインは、
普通に友達として接するとフラグが立つものだし。
作者のジョセフィーネも、
ありのままを受け入れてくれる異性を求めているのかもな。
世の中それができない、度量の狭い男ばかりが多くて困るよ……。
――とりあえず自分は、
『応援ボタン』や『コメント』でしっかり評価してあげよう。
ありのままの物語を受け入れて……)
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