第18話 お見通し
「そーいやさぁ、お前バスケ部の人とどーなのさ」
部活動の帰り道、普通に気になったので聞いてみた。案外こういうことはクヨクヨせずにスパッと聞けちゃうんだよな。
「あぁ」
「3日で別れた!」
「…………………」
「はぁぁ?」
さすがに呆れて言葉が出なかった。
てか、もう付き合っとったんかーい。
にしても、早すぎだろばか。安堵よりも先にため息が出る。
「なんで3日で別れたんだよ」
もっともだ。しかも3日なんて、熱しやすく冷めやすいの世界代表レベルだろ。
「んー、なんか映画見に行ったんだけど、楽しくなかったから」
「そーゆうことは付き合う前に見極めるもんなんですぅ!分かったか?このばかちんが」
あーもう、これからこの子が大人になって社会人になった時に危ない人に連れ去られないか心配になってきた。
「ほんとそーだよねえ!マジで私も思ったもん!はぁ、やっぱり高校の3年間は推しに貢ぐわ」
「案外それでいいんじゃね」
うん、これ本心。もう付き合ったりとかしないで欲しい。こっちが病んで倒れるだけだからさ。
「高校中は私の横、裕柊でいいわ」
は、なんてった。そんなん嘘でも嬉しいぞ。
帰ってこれは赤飯たかないとだわ。
「安心して。お前から離れることは3年間ないからさ」
「かぁっくいいー」
「だまれ」
…まじで、お前から離れる気はないから。
「じゃあ今度の日曜日スタバの新作飲みに行こーや」
「お!いいねぇ!いくいく!」
しれっとここで七海との時間を増やすことに成功。やっぱり好きな人との時間はあってもあっても足りなくなるから。
でもこんな簡単に悩みの種が解消されてもいいものかと、逆に不安になってくる。
このこと限りは、七海が飽きっぽい性格をしてて良かったと思った。
「まあとりまさぁ、その一重顔直してからだな。私とお出かけすんのはさあ」
「何様だっつーの。てかこの目、明日には直ってるし!…多分」
「んー、なら今日木曜日だし日曜日までには直ってるね」
「おう!安心せえ!」
「日曜日までにまた、こんな泣かなかったら安心ね」
図星を突かれて一瞬つまづきそうになった。
「……なんで泣いたってわかった」
「そんなの七海様にはお見通しよーだ」
「っけ、バレたくなかったのに」
「分かるに決まってるでしょ?高校からだとはいえ、いっちばん裕柊と今一緒にいるのは私だって言いきれるしね」
かっ、と顔が赤くなるのがわかった。不意打ちでこれは心臓に悪いってこと教えてやりたい。
さらっとそんなこと言ってのけるところ、やっぱムカつく。
「って言ってもまだ6月だけどな?」
こっちばっかりドキドキして、心臓の鼓動が無駄に大きい音を出して燃費が悪い。
「やっぱ、お前好きだわ〜」
軽くではあるが、本心を言ってみるのもいいだろう。
「っ…。ばーか、あほー!やっぱ仲良くないもーん」
……こいつも私と一緒であまのじゃくなのか、?赤くなった顔がまた愛らしいんだわこれが。
まあ可愛いから許してやる。
こうやって2人で歩いて帰るこの時間が何よりも大好きなんだよな。
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