第13話 どういう関係?

裕柊は、仁那が自分から離れて行くまで待っていた。


「もういいよ。ありがと」

仁那は、さっきのことは忘れてと言わんばかりに、いつもの笑顔でそう言った。


「いえいえ。……なんかあったら言えよ。仁那の気持ちが潰れてしまってからじゃ遅いからな」

ほら、もう部活の時間だ、遅れるぞーとか言ってこの少し冷たくなった空気を暖めようと努めた。


やはり間違っていなかったみたいだ。あの子は大分と膨らんだ不安を1人で抱えているのだ。


しかも仁那の性格からして、これだけ溜め込むということは多分誰にも相談できないような重大な要件だ。普段は気軽に あいつがさぁ とか言ってラフに日常生活をこなしているが、本当に大事なことは溜め込んでしまう性分なんだろう。


実際、自分もそうだ。相手の目ばかりを気にして自分の意見をあまり持たない。


幸い、素晴らしい声量とフランクな性格なせいで、いわゆる陽キャの分類に属している。おかげで隅にいるクラス内プランクトンのような、酸素を使っているのかも分からない存在にはならずに済んでいるのだ。


でも正直なところ、相談して欲しかったという寂しさは残っている。自分も、七海のこと以外は全て曝け出しているつもりだ。


人間の悩みの大半は人間関係にあるとかどこかで聞いこともある。仁那も、どこかしらからそういう厄介事を引きずってきてしまったのだろう。


「やっぱ、人間関係か…?」

こういうことは聞ける時に引き出しておいた方が良い場合が大半だろう。


「うん、まあ人間関係っちゃそうかもねえ」

仁那は斜めに視線を外しながらそう答えた。


「じゃあ恋愛関係だな?分かったぞ私は」

まるで某有名な小さき名探偵になったかのような名推理だったと思う。仁那の表情が一瞬止まったのが最もな証拠だ。


「んん、まあ、うん。」

「すごく優しくて、カッコいい。でも、その人は好きな人がいるみたいなんだよ。悔しいなあ」

下に転がっている石ころを見ながら、そう教えてくれた。


「最高じゃん、仁那のタイプってこと、はちょーーイケメンなんだろうな」

思っていたことを言ったのに、それきりは優しく頬を緩めるだけで「もうそれ以上は口出ししないで」と言われているように感じたから、軽くこちらも微笑み返して会話を終わらせた。


そうこうしているうちに総合グラウンドに到着。


「まあ、一旦走って忘れようぜ!」


「うん、そうするね」


誰なんだろうなあ。変なチンピラじゃなければいいんだけど。







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