かつてのお話

第4話 意識革命

 初めて感じた感情に驚くのと同時に、裕柊はこの心の違和感に焦りを感じていた。


 裕柊は、アセクシャル(他者に対して恋愛感情を抱かない人のこと。LGBTの1つ)だと思い込んでいた。


 小さい頃から周りの女の子たちが、誰々くんがかっこいいだとかどーだとか言ってる話についていけなかった。


中一の時に初めて告白された。もちろん男子から。告白されたらちょっと意識しちゃうよねぇとか言ってる子がいたけど、そんなこと一切なくて。


だから、Googleで調べた。好きになれない、と。その検索結果からピッタリだと思ったのが、アセクシャルというセクシャリティだった。


 家に帰り真っ先に、LINEを開いた。相手は西沢涼にしざわりょう、裕柊の元彼だった。


いつも裕柊の相談に乗ってくれるのは涼で、それは別れてからも同じだった。


『涼、涼はさ、人を好きになった時ってどんな感じになった?』


 メッセージを打ち終わって、我ながら、どんな相談してんだよと、笑いたくなった。


涼の既読はいつも速い。ほんとこいつどんだけ暇してんだよ。


『俺は心臓がギュッてなったけど。またどしたん笑』

 やっぱギュッてなるもんか。


『なんか面白いことあったみたいやな笑笑』

 なんも面白くねーよとスマホの画面に言いつけてやった。


『で、どんなやつなんだよ、お前の好きになった人って』

 そういえば名前、聞いてなかったな。肝心なことを忘れていた。


「ってまだ好きかどーかわかんねーっつの」


 裕柊は再度、自分にも言い聞かせるようにスマホに向かって言いつけた。

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