第3話 うさぎ

 このうさぎ、見たまんま。極上のぷにっと感だ。案外美脚だな、おい。別に太ってるとか、そういう訳では無いのに、何だこのスクイーズみたいな触り心地。


そう思いながら裕柊は、うさぎのふくらはぎあたりをマッサージしていた。


「ねえ聞こえてるー?裕柊ちゃん?」


 そう言われ、うさぎがさっきからずっと熱心に、裕柊に語りかけていたことに気がついた。


「あぁ聞いてる聞いてる、韓国のBTSってグループが好きなんだよね。まじイケメンばっかだよなぁ」


 韓国は好きだけど、女性アイドル派なんよなぁ。そう思いながら答える。すると


「裕柊ちゃん、TWICE好きだよね?多分だけど〜」


 え、なんで分かったの。そう言おうとしたとき


「裕柊ちゃんのスマホの画面、パッて見えちゃったんだ、さっき。あれTWICEの子だよね!」


 そう、うさぎは言った。こいつ案外見てないようでいろんなところを気にして見てるんだな。


「そーだよ!よくわかったねぇ」


 少し感心しながらそう言うと、うさぎは褒められるのが好きなのか、はたまた、ただの照れ屋なのか、恥ずかしそうにこっちを見て絵の具の赤を原色でそのまま塗ったようなほっぺで笑った。


「あ、七海ちょっと来て。書いてもらわないといけない書類があって…」


 あいつが先生に呼び出された。もっと喋ってたかったのに、と先生を軽く睨んだ。


 冷静になってよく考えてみる。何故こんなにこの子が気になるのだろうか。


仁那や他のクラスの子とは気兼ねなく何も考えずに会話をすることができるのに、このうさぎと会話するとなると何故か、どこか着飾ってしまう自分がいる。


何となく、目で追ってしまうのだ。あの顔はさすがに反則。しかも、笑い声を聞くと何故か親のような微笑ましい気持ちになるのだ。


まだ親になったことも無い高一坊主に言えることではないけど。


ただ、この変な感情は今まで生きてきた中で初めて感じる、楽しさの中に不安定な気持ちが混じった少しチクチクとした感情だった。


これ多分"好き"なのか?


なんだよ、ただの一目惚れじゃないか。


いや、少し間があって気付いたから二目惚れなのか?

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