第3話 ワンシーンのような

ガラガラ

講義室の扉をあけて

窓を見るそこにはあの姿・・・

(ああ、いいな・・・)

つい思ってしまう

でもこの前のような失敗はしない

何気ない顔をしてこの前と同じ席に

ガタっキーーーー

椅子を動かす

その音に今度は彼がこちらを向く

目があうと

コクっと彼が頭を下げる

それに私も続けて会釈をした

普通の対応を心に決めて行動をする

でも心臓はすごく脈をうってる

ドキドキって擬音があるけどこれのことか・・・

そのあと普通に講義が始まり

普通に終わる

数日あってまた同じ講義

そして同じ行動

お互いに来るタイミングは違うが

場所はなぜかもう固定されていて

何となく窓際で一つ席を離してむこう

あまり不自然にならないようにたまに目線をうつす

そして変わらない光景

なんか何かのワンシーンのような横顔

うつろげだけどまっすぐな視線・・・

それが・・・好きだった

そんな時間が幾度か続いたある日

ガタっギーーーー

彼が立ち上がりいつものように帰る

そう思ったとき

「あの?」

「え?」

一つ席を挟んだ私に彼が声をかけてくる

「すいません、今の講義の内容なんだけど・・・ここの部分ってわかりますか?」

そういって書き込んだノートを広げる

「あ、あの・・・」

突然のことにすこし戸惑う

「あ、すいません。いきなり、でもいつも真面目に講義聞いていたから・・・」

苦笑いを浮かべる

動揺が止まらなかった

「私あの・・・すいません。たぶんそんなにうまく説明はできないかもです・・・」

自身のない声で伝える

「そうですよね・・・すいません」

そういって頭を下げその場を去ろうとする

でも

「あの!よかったら今から教授に聞きにいきませんか?」

上ずった声で提案する

「ああ、たしかに教授に聞けばいいか!わかりました!いきましょ!」

明るく返しくれた返事に私は急いで支度した

ガタン!キーーーー!

椅子を勢いよく机に戻して二人で教授のもとへと向かう

「すいません、付き合わせてしまって」

「いいんです、私もわからなかったから」

そんな話をしながら教授のもとへ

そしてさっきのわからないところへの解説をきいた

勉強熱心な姿に上機嫌な教授を背にその場を去る

そのさなか

「これから時間ありますか?」

「え?いいえとくには・・・」

「じゃ、学食でも行きませんか?一緒に来てくれたお礼したくて」

「そんな、いいですよ!私が答えられなかったことなんで私も勉強になりましたし!」

「そうですか・・・そうですよね、いきなり男からごはんをなんて」

と困り顔で笑う

その姿をみてつい

「いやじゃないです!本当に!ただ申し訳ないのでそのお礼とかはなしで・・・食べに行きませんか?」

するとパアっと顔を明るくし

「はい!」

その顔にこちらがうれしくなる

そうやって二人で学食に向かう

お互いに選んだメニューを食して

そのあと改めて自己紹介をした

距離が近くなったそう感じた

実際にその日からいつものルーティーンは変化した

席にいくと「どうも」

講義が終わると「それじゃ」

言葉がついてくるようになった

さらに講義の問題のわからなかったところとかを質問するようになった

そんな時は学食も一緒に・・・

話していくほど深まる関係

いつの間に連絡を交換して遊びに行くようになった

はじめは緊張していたけど回を重ねると

緊張は消えていった

近くで落ち着く人そんなふうに思った日々

そして

「あの、君が好きだ!」

遊んだ後の帰り道

別れ際にかけてくれた言葉

本当にうれしかった

「私も、あなたが好きです・・・」

恥ずかしくて顔を見れなかった

でも彼も嬉しそうにしているそんな気がしていた

なんだか結ばれた気がした

心と心が・・・

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