9.
口を閉じた子猫は、よちよち回りながら金色の光に向きなおして歩み寄り、ふたたび強く鳴き声を上げる。
すると、遠くで輝くばかりだったふたつの金色の光が一瞬だけ消え、その輝く色をわずかに変えた光は、ノエルと子猫のほうへ轟音と共に雪煙を巻き上げながら近づいて来る。
さらに力強く鳴き声を上げた子猫は、慌てた様子でノエルに駆け寄り、小さな背中に飛び乗ってピョンピョンと何度も元気よく跳ねた。
金色の光が、轟音をたてながら大きな輝きに変わる。
雪煙の中から徐々に姿を現したのは、黒い光沢の立派な車体だった。
車は数メートル先で急に止まり、フロントドアが吹雪を切り裂くように開く。それと同時に女性の叫び声が聞こえたかと思えば、派手な服装のお姉さんが車内から飛び出してきた。
「えっ……やだ、
お姉さんはノエルに駆け寄り抱き起こすと、運転席の男性に向かって彼の名前を叫び、呼ばれた男性も車外へ降りる。
やがて男性はノエルを横抱きにして、お姉さんと口論をしながら車に乗り込んでいった。
そんな様子を静観していた子猫は、閉まるドアへ駆け込みシートへ飛び乗る。
そして豪快にエンジンをふかす音が雪の夜に響き渡ると、黒のSUVは銀世界を抜け出すかのような勢いで雪煙を巻き上げながら走り去っていった。
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