6.

「ニャンちゃーん!」


 吹雪の中、風に抗いつつ何とか周囲を見まわすが、子猫も人影もまるで見あたらない。汗ばむ身体もすっかりと冷め、凍てつく痛みへと変わりノエルを苦しめる。


 それでもノエルは寒さに耐えながら、かじかむ足でさらに先へ先へ進む。

 やがて子猫の小さな足跡は、大きな雪の塊の真下で終わった。


 しゃがんで下をのぞき込む。

 またもやサバトラ柄の子猫と目が合い、ノエルの紅い頬っぺたが明るくほころんだ。


 この大きな雪の塊の正体は車のようで、タイヤの近くで三つ指座りをしている子猫は、ノエルを見つめたまま一鳴きしてその場を動かない。


「ニャンちゃん、おいで」


 子猫にそっと、両手を伸ばす。


「ニャンちゃん」


 続いて、舌を何度も鳴らしながら呼んでみれば、子猫がよちよち歩きで手のほうへ近づいて来る。

 毛糸のミトンに優しく包まれた子猫は、ゆっくりと持ち上げられて笑顔のそばまで抱き寄せられた。


 ノエルが子猫を大切に抱きかかえて立ち上がったその時、目の前の雪の塊が少しだけ崩れ落ちて中からリアドアの窓部分が現れる。


 思わず背伸びをして車内を覗く。


 大小の人形のような黒い影がいくつか見えたが、暗くてハッキリと細部まではよくわからなかった。

 そのかわり、何だか排気ガス臭くて気持ちが悪くなってしまい、ノエルはすぐに子猫を連れてその場を後にした。


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