3.
家に着いたノエルは、ドラム式洗濯機から乾いた洗濯物を取り出してたたんだり、フローリングモップで簡単に床掃除を済ませる。仕事で忙しい母親を少しでも助けようと、家事全般はノエルが積極的にこなしていたのだ。
「あっ、そろそろ夕飯を作らなきゃ!」
今夜はいつもの作り置きおかずではなく、母親の帰宅時間に合わせて豆乳生姜鍋を作ることにしていた。
ノエルはこなれた様子で、
それから用意した踏み台に乗り、対面キッチンに先ほど買ってきた野菜を並べ、料理本に記載されているレシピをあらためて確認してから、小さく「よし」とつぶやいて調理を始めた。
白菜を葉と芯に分けて切り、水菜をざく切りにし、えのき茸の石付きを切って手でほぐす。長葱を斜めに切ってから生姜を千切りにして、最後に絹ごし豆腐を三角の形で8等分に切って6号サイズの土鍋に入れた。
冷蔵庫を開けて、つま先立ちでドアポケットからスープ作りに使う豆乳を手に取ると、中身が異様に軽く感じられた。
恐る恐る容器を振ってみる。軽やかにチャプチャプ音がした。
「ええーっ!?
豆乳生姜鍋に豆乳がなければ、ただの生姜鍋である。
慌ててキッチンから天然木の壁掛け時計を見れば、ちょうど午後6時を過ぎようとしていた。買いに行くにしても、この時間だと外の雪は本降りとなっているはずだ。
こうなったら、帰宅途中の母親に豆乳を買ってきてもらうしかない。
ノエルは小さな唇を尖らせながら、リビングのテーブルに置いたスマートフォンを手に取る。
だが、悪天候の影響で電波状況が不安定なのか、画面上部のステータスバーには〝圏外〟と表示されていて、母親に連絡ができない。
ノエルはしかたがないと潔くあきらめ、薄紅梅のキルト柄エプロンから赤いダッフルコートへとふたたび着替えた。
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