第28話 Fun memories you want to forget.2

 彼女──先輩の名前は静海夜しずみよると言う。


 静海夜は学校内でも有名な美人。

 そんな先輩が彼女になるなんて。


 そして、僕と先輩はよく一緒に出掛けた。

 先輩と居ると、とても楽しかった。


 ある日僕は、先輩と手を繋いだ。

 先輩の手の感触がずっと残り、夜は寝れなかった。


 楽しい毎日だった。



 ►►►


 目を覚ますと、時間は6時半。

 今日は平日の最初の月曜日。

 昨日は、先輩と出掛けていたため少し疲れが残っている。


 ──昨日は歩いたからな……イタタタ


 腰が痛む。

 だが、今日も先輩に会えると思うとその痛みはなんてことない。


 いつものように、家を出ると。


「やぁ、おはよう」


 先輩が家の前にいた。


「一緒に登校する約束ってありましたか?」


 約束があったら謝ろう。忘れてたって。

 だが、そんなことはなく。


「約束なんてないよ。一緒に登校したいっ

 て思ったからだよ」

「待ちました?」


 長く待たせてたら申し訳ないな……


「ほんの5分くらいかな。」

「なんかすみません」


 一応、謝る。

 僕はいい子で真面目なので。


「だから、君は悪くないよ……あっ行こう」


 僕は先輩と一緒に登校した。


 ►►►


 ガラガラと教室のドアを開けると、クラスメイトが僕に近寄ってきた。


「おい!スイ静海先輩と付き合ったって本当か?」「本当なの?」「スイお前って奴は…俺の初恋を…」「おめでとー」etc.


 賛否両論。

 男子は目が死んでいるので怖い。

 女子はニヤニヤして寄ってくるので怖い。

 男女ともに怖い。


 ►►►



 昼休みになった。


 ガラガラ!!


「君と屋上で食べたいな。」


 先輩だ。


 クラスメイトは僕をガン見。

 視線を感じまくる。


「はい!」


 ►►►


 今は3月で桜の木に少しずつ桃色がついてきた頃。


 屋上で先輩と会話して食べている。


「今日は君に話たいことがあってね。」


 真剣な顔で僕を見た。


「私は遠くの高校に行くことになったんだ。」

「どこか聞いてもいいですか?」

「父の転勤で愛媛に行く。」

「となると、もう会えなくなるんですか?」

「会えなくなるわけではないが、今よりは会いにくい」

「そんな。」


 僕はショックだった。

 やっと先輩と楽しく付き合っていたのに。

 同じ高校に行くって夢もあった。


「すまない。本当に」


 ポタッ


 先輩が涙を流していた。

 先輩が泣くのは始めて見た。


「なんで、泣いているんだ…私。」

「………」


 なにも、答えられない。

 僕も涙をこらえるのが精一杯だ。


「私は君の事が好きだ」

「だったら…いなくなんないでよ」

「君は難しい事を言うね──私も君と離れたくないな」

「だったら!!」

「ダメなんだ。例え君でも、今は家族が一番なんだ。」

「えっ」


 あはは。僕は一番じゃなかったんだ。

 やっぱり、先輩とは釣り合わないや。

 先輩は先輩の事情があるからね。


「このままだと痛いな。」


 僕は泣きながら笑った。


「先輩。別れましょう。」

「…ッ!どうしてだッ!!!」


 取り乱した先輩は始めて見たな。

 ほら、見たことない先輩がまだいっぱいある。


「痛いからですよ」


 僕の本音。

 胸が痛いな。

 始めて先輩に会ったときはドキドキだったけど、今はズキズキ。まるで、なにかに刺されているようだ。


「どうしたんだ君!」


 なんか先輩が言ってる。

 はぁー。先輩の声を聞くだけで胸が痛む。


「これが正常ですよ。」

「そんな君は嫌いだッ!」

「………」


 嫌いだって。

 やっぱり、僕は先輩とは釣り合わない。


「無理させてたんですよね。」

「い、いや。ちがう。今のは…今のは。」


 その場を離れよう。

 ここにいると痛い。


 僕は教室にもどった。


 ►►►


「そんな君は嫌いだッ!」


 え。

 今、私なんて言った。

 彼にと言ったのか?

 なんで、なんで私は素直になれないの?

 なんで?

 好きなに。好きになれたのに。

 始めての感情を教えてくれた彼が好きなのに。

 なんで、その彼にと言えてしまうの?


「無理させてたんですよね。」

 ちがう、無理などしてないよ。


「い、いや。ちがう、今のは…今のは。」

 ──本当は彼…いや君が好きなのに。


 彼はなにも言わずに屋上から出て行った。


 ──君のことは好きだよ。大好きだよ。なのに……ごめんなさい。


 ►►►


「それから、僕は先輩と会ってない。」

「彼女の名前。どこかで…」


 アリスが何かを思い出そうとしている。


「あっ。そういえば、モデルやってるよ、静海って人」

「は?」


 嘘だ~。

 そんな事あるわけ。

 まぁ先輩は美人だったけど。

 G○ogleで調べよ。ポチポチ


「まじだ。」

「アリス、彼女の所属している事務所と接点あるよ。」

「まじ?」

「まじ。」


 僕は先輩に謝りたかった。

 だから、僕は。


「彼女と会わせてくれないか?」


 ────────────────────


 スイの過去編でした。

 誤字脱字等ありましたら、ご報告お願いします。




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