第3章 賑やかな夏休み?
第21話 美少女歌手
「
のために可愛くなったよっ!」
「は?」
突然、帰宅際に可愛いらしい女性が声をかけてきた。
「え。覚えて………ない?」
「アリス?」
なんか知っている気がする。
頭をフル回転させる。
あ。
「美少女歌い手の──」
「そうだよ!そのアリスだよっ!」
「え……。あっ。お目にかかれて光栄です。」
有名な方には丁寧にっと。
あれ、あれあれ。
『美少女歌手』の顔がどんどん曇っていく。
「あ、あの。」
「くすんっ…。すーくん……覚えてないの?」
「えへ?」
『すーくん』って呼ばれてるから、知り合いなんだろうけど。
いや、待て。『すーくん』って言われてるんだぞ。知り合いに決まっている。でも知り合いなに有名人なんていない。
人違いかも。うん人違い。
だってね、ほんの1分で周りに野次馬がこんなに集うくらいの有名な方だし。
「人違いじゃないですか?」
『美少女歌手』は「え…」と哀しそうな顔をして見ている。
マズイかもな。ヤバいかもな。
「椎名水だよ……ね?」
可愛らしく、首を傾げて言った。
マジか名前知っているぞ。えー嘘だろ。人違いじゃないみたい。
自分なりに思いだそうとはしている。だが思い出すかは別問題。
「あ、にぃ!」
久しぶりに太陽のご登場。
「不登校でいつになっても実家に帰らない太陽さん」
「ヒドッ」
「事実だろ、ジ・ジ・ツ」
「……ウッ」
太陽は一歩下がった。
その太陽は、両手にエコバックが見えた。
「買い物帰りか?」
「うん…………って、なんでアリスさんが居るの?」
初対面で『アリスさん』呼びか~。
「そうなんだよ、『美少女歌手』が僕の事を知っているらしくて……」
「いやいや、なに言ってるの?幼なじみのアリスさんだからね。」
幼なじみ。幼なじみ。幼なじみ。
まさか、
「あーちゃんなのか?」
パアッと目を輝かせて、僕の手を握った。
手あったか。惚れそう。
金髪GUYが『チッ。なんだよ、あんな陰キャより俺の方がマシだろ。』などとヤジが向けられる。それにつられるように冷たい視線が送られる。
でも大丈夫だ。何故ならイチ・瑠璃さんのおかげで鍛えられたからだ。
「あー。もうっ!そこの金髪くん。」
「ど、どうしましたか。アリスさん。」
金髪GUYは慌てあーちゃん──ゴホンッ、ゲホッ。アリスを見る。
「そう云うヤジを飛ばすあんたよりも、すーくんの方が格好いいからっ!」
「そ、そっすネ。ちょい言いすぎたっス」
口調が変わり焦りがみえる。
僕よりも、あー、あーーーーーーー
僕よりも、アリスが格好いい。
「ねぇねぇ。すーくんちょっとお茶しない?」
一瞬で人が変わり。驚く。もう、女優だなと言いたいところだ。
てか、すーくんは…
「すーくんはハズイから控えて欲しいな。それと、太陽もいるし後─イタッ」
「太陽のことは気にしないでいいよ。楽しんで。」
太陽が僕の横腹をつねりながら言った。
※※※
「ふふふーん!ふーふふん!ふふふっ!」
鼻歌をしていると思ったら、急に笑いだした。
「不気味だぞ。アリス。」
「ごめんごめん!久しぶりにすーくんに会ったから。てかっ!アリスってなに?」
「君の名前」
「いやちがうっ!ちがってないっ!」
頭が追い付いてない様子のアリスだ。
「ここでいいか?」
「え?……あ、うん。」
僕たちは安くて美味しいサイ○リアに入店した。
店内にアリスが入ると周りがどよめく。
改めてすごいなと思う僕だったが、そんなアリスと2人でお茶をする僕もすごいなと思う。
「アリス、イメージ変わったな」
昔のアリスはザ・清楚だった。
今となっては僕の好みに合うような女性になっている。
「うん、変えたもん。すーくんのために。」
「僕のため?」
「うん。だって昔のすーくんは私のことは好きじゃなかったでしょ。」
「い、いやー。そんなことないぞ…?」
「片想いだったのアリスは。だから絶対にすーくんを一目惚れさせるって思った。」
「だからって、イメチェンしすぎじゃないです?」
「だってすーくんが、鳴護アリサ好きって言ってたから。」
小学5年だ……。とある魔術の禁書目録にハマってたとき。
「え、好きじゃないの?鳴護アリサ」
「す、好きだよ……。」
「アリスね、『とある』全部観たんだよっ!」
「……………」
もう、口が開かない。
高校受験の時、持っていたラノベ全部を段ボールに詰めて押し入れにしまった。
それ以来、触っていない。
そして、この後1時間程、話をした。
まぁ、そのなかでアリスは僕の黒歴史をえぐったりなど、僕の鋼のメンタルが傷つけられた。
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