第20話 メンタル崩壊の危機

 昨日は黒歴史に追加されるほどのトラウマが生まれた。深くは掘らないでください。


 僕は恐る恐る教室に入る。

 すると、すぐに西嶌が。


「昨日、ヤバかったな(笑)」


 余計な(笑)が語尾に付いている。うざー。

 トラウマは掘り返されるんだな。もう諦めた。


「あ……アー。ソレナーヤバカッタナー」


 もう僕は、後悔に押し潰された結果、棒読み。感情0で西嶌と話す。


「ん?なに、なに?根に持ってるの?」


『?』が多すぎ。


「うる───」


 いいや、無視しよう。


 西嶌が話しかけてくるが、耳を貸さずに本を読む。なんだか、「おーい」という声が聞こえるが無視。


「おーい!スイ!」


 イチかー、深堀されるわ。気を引き締めて、僕はイチに立ち向かう事を決めた。


「スイ……昨日は頑張ってたね?」

「ブッッッッ!!!!」


 斜め45°からの言葉の右フックが僕に決まる。

『頑張ってたね?』って慰めてるの。それともディスってるの。最後の『?』で疑問形になってるよ。


 あ~~。だめだ。


 僕が青ざめた顔を色で頭を抱えてると。


「水くん……?」

「イヤッーーーーー」


 身体が身を守るための脊髄反射で一歩下がった。

 カクカク震える僕の身体に瑠璃さんは驚きながら、僕の右手を瑠璃さんの両手に握られる。


「大丈夫、水くん?」

「………ッ。メンタルが崩壊しました。もう無理。助けて。」

「えッ!?」


 瑠璃さんは「本当に大丈夫?」と何回も僕に聞いてきた。


 瑠璃さん天使だよ。

 僕は瑠璃さんの手を握りかえす。

 ん、視線が痛いな。

 周りを見渡すと、目を赤く光らせる男子~ズが僕を見ている。


「あ、あの。その。ごめん……」


 一応、謝る。

 僕は瑠璃さんの握っていた手を離そうとするが、瑠璃さんが強く握りかえしていて、手が離れない。

 あ、やばい。男子~ズの目が……


「る、るり。さん……ちょっと。」


 瑠璃さんはポカンとした顔で見ている。


「おい、おい。椎名、そうか、そういうことなんだな。わかったよ。俺達を敵にまわすということだな。」

「い、いやー。それは違うよ。うん違うよ」


 手を離そうと、上下に揺らすが離れる気配がない。


「タイムオーバー。フッ……ギルティッッ!」


 男子~ズが指をパキパキならしながら歩いてくる。

 あ。終わった。


「おい!そこの男子ども。ホームルーム開始2分前だぞ、着席しろ。」


 学級委員の女子が声をかけた。

 って、「瑠璃さん時間まずくない──って、いない。」


 いつのまにか、居なくなっていた。

 イチに聞くと、男子~ズが近寄ってきた時に帰ったらしい。


 はー。もう、朝から大変だ!!!


 ※


「え~。明後日から夏休みなので、課題だします。ちゃんと聞いとけよ」


 もう、夏休みなのか。

 課題の量がそこまで多くなかったので、安心だ。早めに終わらせよ。


「椎名、夏休みの課題、椎名ん家でやっていいか?」

「え。どうして」

「今、社会人の姉ちゃんが家に来てるから」

「別にいいじゃないか、お姉さんに勉強教えてもらいなよ」

「本当にお願い。一生のお願い。」

「…………」

「椎名様お願い。椎名様のラブいちゃハーレムは邪魔しないので。」

「はぁ~。ラブいちゃハーレムは余計だな。……わかった。いいよ」


 西嶌は目を輝かせていた。

 僕の広い器に感謝しろよと言いたいが、言うと「調子にのるなよ」とか言われそうだから言わない。いい人だから僕は。


「で、いつ?」

「課題が終わるまで。」

「は?………一週間だけだ。わかったな。」

「いや、二週間は欲しいな?」

「一週間な。」

「二週間」

「一週間な。」

「はい。」


 ゴリ押しで3日にする。

 それまでに西嶌が課題が終わるかが心配だ。

 なんとかなるだろう。



















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