第4話 実妹と義妹の2人

 先輩アッパー事件から1日がたった。

 昨日の練習での先輩の視線が余りにも恐すぎて、普通の内野ゴロをトンネルしてしまった。

 僕は、部室の目の前まで来た。が中に入る勇気がでない。

 すると、アッパー先輩でない先輩が来た。

「どうした?椎名。」

「あの。昨日の…」

 先輩は、両手でパチンと音をならし。

「アッパー事件かー、椎名 気にするなよっ!」

 と前向きな言葉をかけてくれた。が無理だ。

 ガチャ。

 部室のドアが開いた。

「ああ。椎名か」

 そこには、アッパー先輩がいた。

「あ。え、あの…………キノウハモウシワケゴザイマセンデシタ。」

 アッパー先輩は ぷっ と笑った。

「え?」

「そんな、怒ってねぇーよ」

「…、マジすか、」

「俺だって悪いからな。」

 あー、先輩が光って見えるーー

「あっ、でも昨日の練習の時…」

「あー、あれな。グローブの紐が切れちまってな」

「………」

 嘘でしょ。

 ポーカン。

 アッパー先輩はアハハと声を出して笑っている。

 そして先輩の脇の下を通るようにして、部室に入った。


 ※


 ──疲れた。

 家のドアを開ける。

 と………

 ん?リビングが騒がしい。そして、靴が一足多い。

 リビングに繋がるドアを開けると。

「にぃ!!」

 え、太陽?

「太陽なのか?」

「うん!にぃおひさ!」

 右手を出してきた。

「おひさ」

 パチっと太陽の手を叩く。


 ※


 ───── ゴホンッ


 とイチが咳払いをする。

「あの、スイ。この子は?」

 強めに聞く。

「こいつは、椎名太陽。僕の実妹だ。」

「実妹がいたんですか!?」

 とフタがいう。

 その頃ミツは僕の事をジーと見ていた。

「ああ。親が離婚したときに、太陽は母さんの方についていったからな。」

「にぃ!その言い方には誤解が!太陽はにぃと居たかった!でもママが強制的に!」

「わかった太陽。よく頑張ったな。」

 すると、太陽はうるうるした目で、

「にぃ。がんばった。私、がんばった。」

 その目を見ていると僕もうるうるしてくる。

 ───ゴホンッ

「じゃれあいは、そこまでに。」

 とイチが言うと。

 すぐに太陽が

「じゃれあいじゃないし!にぃとの感動の再開だもん!」

 と言いながら腰に抱きつく。

「そういうのいい。」

 とミツが口を挟んだ。

 僕はフタがこの会話に入ってくるとは思っていなかったので驚いた。

「あ、あの?」

 とイチが眉間にシワをよせ、太陽を見ている。

「なんですか?」

「いつまで、抱きついているのかしら。」

 あ。本当だ。昔だったら当たり前だったので気づかなかったが、今思えば太陽の小さめの胸が当たっていた。

「にぃ…だめ?」

「あ、ああ。だめだ。歳を考えろ。」

「え、にぃ……わかった。にぃが言うなら。」

 ──あーーー!やっちっまた!ごめん太陽!僕、もっと太陽を感じたかった……ん?あっ、別にやましい意味じゃないです。 ─

 ──ゴホンッ

「えーと。太陽さんに聞いていい?」

「なんですか?」

「なんで、ここに来たの?太陽さんのお母さんは?」

 そういえばそうだな。理由なしで太陽がここに来ることはないだろう。

「えとね………」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る