#A

 あづさはね、周りのみんなが笑っていると、うれしくなるんだ。

 みんなが笑顔だと、あづさも自然に顔がへなへなーって、柔らかくなる。



 いつまでも、みんなと一緒に笑いあっていたかった。

 そんな風にいつまでも過ごせるのかなって、勝手に思ってた。



 でもこの世界は、そんな幸せすぎること許してくれなくて。

 始めはのぞみちゃんがいじめられるようになった。

 のぞみちゃんの悲しそうな顔を見るのがつらかった。

 彼女にそんな顔をさせている、クラス全体に腹が立った。

 我慢してたけど、一回だけ、クラスの女番長のことをぶってしまった。

 たぶんそれがあったから、今度はあづさが標的になった。



 でも、あづさは絶対に間違ってない。

 だって、大切な人を守ることは、絶対に正義だから。

 お姉ちゃんとしゅんちゃんはいつもそうやって、あづさを守ってくれたから。

 だから後悔なんてしてない。



 だけどね、あづさはがんばっていつも通り振る舞おうと思うんだけど、やっぱりうまくいかないこともあって。

 そのたびにお姉ちゃんとしゅんちゃんは心配そうな顔を見せる。

 あづさはまた2人に迷惑かけてるなって悲しくなって。

 あづさのことなんか気にしないでって言いたいんだけど、心のどこかでまだその温かさに頼っちゃってる自分がいる。

 この前も、しゅんちゃんに言おうと思ったんだけど、言えなかった。



 あづさは、周りのみんなが笑っていると、うれしくなるんだ。

 でもみんな、お姉ちゃんもしゅんちゃんも、それにのぞみちゃんも、

 あづさのせいで苦しんでいる。

 あづさはみんなに迷惑をかけてまで生きていたいだなんて思ってないのに。

 もうこれ以上、迷惑をかけるわけにはいかない。



 だからあづさは、自殺するって決めた。




 2024年9月27日金曜日



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る