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2025年7月8日火曜日、東京都世田谷区、某所にて
「はいこれ」
「……何?」
「お誕生日プレゼントですよ、今日でしょ? 誕生日」
「うん、そうだけど。なんでわざわ――そういうことね」
「うん、察しが良くて助かります。例の件について、どうかなって」
「だから私も忙しいんだって。そう急かされても」
「……プレゼントでテンションアップさせてからだったら聞き入れてくれるかなーって思ったのだけども」
「それとこれとは話が別。プレゼントはありがとう」
「ああ、いえいえ、おめでとうございます。お二人で仲良く楽しめるものになってますんで」
「いやらしい意味じゃなくて?」
「まさか。僕、そういう変なこと言ったことないですよ」
「さんざん茶化しといて。ぜったい式には呼ばないからね」
「えー? こうして貢いでるのに」
「そんなしょーもない話しに来たなら帰ってくんない? さっきも言ったけど、私そこそこ忙しいんだって」
「はあ? しょーもない話ってなんぞ? カウンセリングの予約の件でお客さんとしてわざわざ交通費かけてここまで来たんだけど」
「交通費かけてってのはウソ。そこに自転車止まってる」
「それは盛った。でもお客さんであることには変わりないよ?」
「……失礼いたしました、お客様。本日はどういったご相談を?」
「気持ちわるっ」
「ほら見ろ」
「……まあ、今日のところは撤退しますよ。でも真面目になるべく早くお願いします」
「分かってる。今月中には連絡する」
「頼みます。じゃ、僕は帰るんで。くれぐれも目は大事にね。
「まだ籍は入れとらんわ」
カウンセラーの女性は友人が去っていくのを確認し、デスクに置かれている資料に目を通し始める。
プルルルル、と音が鳴った。
彼女は電話を取り、話し出す。
「もしもし、こちら、世田谷カウンセリングセンターの
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