第12話 世界に1つだけの何とか教育は、弱い立場の人を傷付けるだけ。悲しい言葉がある。「…私たち、弱い女性は、利用される駒でしかない」

 「私も、まだまだ、子ども」

 「…」

 「ゆうゆる大学生の、レベル」

 「…」

 「新卒のヒヨコちゃんたちの、レベル」

 「…」

 「ぬくぬくあたためられちゃうのは、仕方がない」

 「…」

 「貴重な命、なんだから」

 「…そうね」

 「でも、世界に1つだけの何とか教育っていうのは、間違い」

 「…」

 「怖いよ」

 「…」

 SNSで知り合った男性は、皆、その子の身体を求めてきたという。

 「名前も知らない人から、勝手にキスされて、身体を、いたずらされちゃったの。…ううう。お母さん…」

 知り合えた男性は、さようならも言わずに去っていったという。

 「私…」

 「何?」

 「有期の非正規は使い捨てなんだよっていう言葉が、頭をよぎりました」

 「そっか…」

 しかしながら、その子は、専門の相談所にいき、プロに意見をぶつける行動をとらなかったという。

 「どうして?」

 「え?」

 「どうして、専門家に、相談しなかったの?」

 聞くと、泣きじゃくりながら、か細い声が絞り出された。

 「相談、できないよ。…私たち、弱い女性は、利用される駒でしかないんだから。それは、予想して、わかっていた…。言い訳は、できなかったから…」

 「そっか…」

 「弱い立場は、いつも、こう…」

 「…」

 「それでも、私は…」

 「…」

 「誰かに必要とされているんだから我慢しなくちゃいけないと、思った」

 「真面目なのね」

 真面目だから、疲れちゃったんじゃないのかな?って言ってあげるのは、止めにした。

 それは、必ずしも、優しさじゃない。

 その子を、傷付けてしまうかもしれないんだし。

 「…ナエさん?」

 「…」

 「私、結局、ずるずると、ここまできちゃった…」

 「…」

 「断るのなんて、無理。お母さんなら、どうだったろう」

 「…」

 「私は、まだまだ、子どもだった」

 「…」

 「…」

 「…」

 「やることは、他に、限られてきちゃうんだし」

 その先は…。

 何となく、わかった。

 わかりたくなかったけれど…。

 どうして、こんな悲しい言葉があるんだろう。

 「…私たち、弱い女性は、利用される駒でしかない」





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