第11話 やっぱり、ヤングケアラーの子たちのように…。真面目な子ほど、そっと、弱音を吐かされちゃう。生きることにあきらめちゃ、いけないのに!

 「ハローワークには、いきたくないの?」

 「うん」

 「どうして?」

 「だって…。ナエさん?」

 「何?」

 「有期の非正規社会が、身近に見えてきちゃって、さみしいから」

 「そっか」

 「…」

 「ハローワークの職員の中には、バブルさんっていう人がいて、相談しにいくと、かえって、へこまされることもあるし」

 「あの人たちは、頭と心の感覚が、弱い立場の人たちとは、大きく、違うものね」

 「でも、ナエさん?」

 「はい」

 「SNSを甘く考えちゃったら、ダメですよね?」

 「…」

 「事件に、つながっちゃいますから」

 「かなり、嫌な思いをしたの?」

 「…殺されちゃう」

 「…え?」

 「殺されるかもしれないと思ったことも、ありました」

 「…」

 それでも、SNSで誰かとつながることは、やめられなかったらしい。

 「どうして?」

 「え?」

 「どうして、いやな思いをしちゃったとしても、SNSで知らない人とつながるなんてことを、やめなかったの?」

 「だって…」

 「何?」

 「それしか、できなかったし」

 「そっか」

 「…」

 「悪いことを、聞いちゃったね」

 「いくところが、なかったし…」

 「そっか…」

 「…正直言っちゃえば、いやだった。こんな生活はやめなくっちゃいけないと、思ってはいた。でも…」

 「やめられなかった?」

 その子の首が、こくんと、下に垂れた。

 「どうして…?」

 「やっぱり…」

 「生きるためには、しなければならなかったと、思ったの?」

 また、首が、こくんと、下に垂れた。

 「やめられないよ…」

 「やめられないの?」

 「無理」

 「…そうだよね」

 「私たちのような弱い身分の人はこうすることでしか、生きられないんだなって、わかっちゃったんだから」

 「…」

 「こんなとき…、私を離さないお母さんが、いてくれたらなって…」

 「…」

 「そして、私を心から叱れるお父さんがいてくれたら、良かったなって」

 「…」

 「生きることにあきらめちゃダメだって、言ってくれたんじゃないかと思う」

 「…」

 「ナエさん?」

 「何?」

 「私、疲れたよ…」

 そっと、弱音を吐いていた。



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