第10話 弱い立場の人は、いろいろ。学校の先生でも、給特法の壁に泣かされる。だから、定額制働かせ放題って言われちゃうんだよね…。 

 「困ったわねえ。学校の先生、なのにねえ…」

 「違うよ、ナエさん?」

 「?」

 「学校の先生なのにじゃ、なくって…」

 「?」

 「そこは、学校の先生だから」

 「…」

 「アハハハハ!」

 思わぬところで、女性の元気が、出てしまったらしい。

 「元気、出たね」

 「うーん…」

 「でもね、ナエさん?」

 「…」

 「制服着たしっかりした人だと思ったら、相手を縛って、監禁するような人がいます」

 「…」

 「学校の先生とか、多い」

 「…」

 「あの人たちって、学校では良い顔しているのかもしれないけれど、学校の外に一歩出たら、マジ、パないから」

 「…学校の先生にも、いろいろあるよ?」

 「それは、知ってる」

 「女性のつらさにも、重なるでしょう?」

 「それは、ナエさんの言う通りかもしれない。でも…」

 「でも?」

 「その感覚程度じゃあ、すべてを救いきれないよ」

 「少なくも、有期の非正規でがんばっている先生たちが、気の毒よね?」

 「有期の非正規は、つらい…」

 「弱い立場の人は、多いのよ」

 「ナエさん?先生たちは、どんなにがんばっても評価されない。給料も、上がらないって、言うよね?」

 「…給特法の、罠」

 「え?」

 「だから、学校の先生なんかは、定額制働かせ放題って言われちゃうのよね」  

 「ナエさん?給特法って、何です?」

 「…後で、教えてあげる」

 有期の非正規話が、悲しくて、ならなかった。

 そこで、ちょっとだけ話題を変えてみた。

 「昼食を取り損なったときは、どうするの?」

 「そのときは、スーパーマーケットの試食コーナーにいって、お腹を満たすようにしています」

 「でも…」

 「何です?」

 「今は、コロナ禍じゃない?」

 「はい」

 「スーパーマーケットの試食コーナーも、やっていないことが、多くなったんじゃないの?」

 「あ、その通りです!」

 「…どうするの?」

 「空腹を忘れるように、すごします」

 「どうやって?」

 「デパートの化粧品コーナーとかにもいって、気を、紛らわせます」

 「…ハローワークなんかには、いってみないの?」

 「いきません」

 きっぱり。

 「それは、どうして?」

 「だって…」




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