第9話  心を満たしてくれる基準は、世代ごとに、違ってくるのかもしれない。この気持ちが、ヤングケアラーの子たちのつらさにも、重なっちゃうのかな?

 「SNSを、使います」

 「また、SNS、なのね…」

 「私、生まれたときからSNS世代なんだねって、からかわれます。本当なんだから、仕方がないけれど」

 「…」

 「SNS世代だからこその、努力なんです」

 「…」

 「新しい出会いのチャンスに、かけるんです」

 「…」

 「こうすることで、生きるしかないんです」

 「知らない男性と、ご飯を食べても、平気なの?」

 「平気です」

 一呼吸、置かれた。

 声が、曇っていた。

 本当は、平気じゃないんだろうなという切なさが、伝わってきた。

 「知らない男性とでも、私は、構わない」

 それは、その子なりの強がりにすぎなかったんじゃないのか?

 「…」

 「ナエさん?」

 「何?」

 「人と付き合うことの意味、とか…。どういう関わり合いが、心を満たしてくれるものになるんだろうか?とか…」

 「…」

 「世代ごとに、基準が違ってくるのかな?」

 「…」

 「ヤングケアラーの子たちのつらさに、重なっちゃうのよね?家族を愛せるからこそ、私がいる…」

 「…あなたは、家族思い、なのね」

 「買いかぶり、ですよ」

 「知らない男性と食事をすることになったとき、お金とか、もらうの?」

 「もらいません!」

 きっぱりと、言い切った。

 そういうことをすると、売春や買春行為、援助交際やパパ活になってしまうからなのだという。

 「私を、助けてください」

 困ったら、SNSで、呼びかけ。

 返信がこないことは、あり得なかった。

 「きた…」

 すぐに、返信。

 やってくる男性に見分けてもらえるよう、その都度、合い言葉を決めて、互いに使っていたという。

 「でも…」

 「何です、ナエさん?」

 「制服系の男性が近付いてくることも、あるんでしょう?」

 「ああ、あります」

 「今は、公務員でも、売春行為をするんでしょう?」

 「うん。学校の先生とか、やばみ」

 「そうなんだ…」

 「金で、女の子の身体を、平気で、買います」

 「…」

 「金は、あるみたいですからね」

 「…」

 「人間性は、失われても」

 「…」

 「公務員としてのプライドとか、ないんですよ」





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