第8話 「私のミスで、家族を泣かせるわけにいかない!言えないよ!」 弱い立場の女性。バブルのじゃまおじさんやじゃまおばさんたちに、わかる?

 その子…。

 あまりに家出に慣れ、夜中までぶらぶら歩いていたところを、民生委員経由で、児童相談所に保護されてしまったらしい。

このとき…。

 性被害を受けたことについては、話せなかった。

 助けてもらったのに…。

 言えない、思い。

 もっと…。

 助けて、ほしいのに…。

 助けてくださいって、言えないんだ。

 弱い立場の、女性だから?

 「友達も、変な人にやられたみたいなんです…」

 そう告白すれば、警察がくる。

 児童相談所の影も。

 名前を、聞かれる。

 答えられるわけが、ないし。

 答えてしまえば、家族に、どんな迷惑をかけてしまうか、わからなかったし。

 学校名も、聞かれる。

 …学校にまともに通っていないことが、ばれてしまうかもしれない。

 どうしたって、ダメ。

 「言えないよ…」

 言ってしまったら、有期雇用の非正規雇用者なら、仕事も、クビになっちゃうんだし。

 「私のミスで、家族を泣かせるわけには、いかない!言えるわけが、ないじゃないの!」

 これが、弱い立場だ。

 バブルのじゃまおじさんやじゃまおばさんたちに、わかるの?

 「私…」

 「どうしたの?」

 「ナエさん?」

 「何?」

 「…すぐに、貯金が、底を尽きました」

 「それから、どうしたの?」

 「頼るしか、なくなっちゃったよ…」

 「頼る?何を?」

 SNSで知り合えた男性のねぐらを、転転としたという。

 「どういう人と、知り合ったの?」

 「…えっと」

 「ごめん。こういうことを聞いちゃあ、いけないのかな?」

 「いえ。かまいませんよ」

 SNSで知り合った人の多くは、30代から50代までの人。

 会社員とか。

 公務員も。

 とりあえず、泊まり込んで、翌朝、相手が出勤するときに、別れるのだという。

 「昼間は、どうしているのかな?」

 「私、ですか?」

 「もちろん」

 昼間は、町の片隅で、ボーッと、座っていたという。

 「少ししたら、やめますけれどね」

 「立ち上がれたの?」

 「たぶん」

 「たぶん?」

 「あれがあるから、安心できる」

 「あれ?」

 「そう。あれを、使う準備をします」

 「あれって?」





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