第14話 部活動などで走る子たちの盗撮問題って、知っていました?そのカメラって、何を、撮っているわけ?こんなんじゃあ、走れないよ!

 アスリートの現実も、甘くはなかった。

 「親戚の兄を医者に診てもらっている時間だとか、相当安静にできているときには、走りにいけました」

 「はい」

 「風を切れて、楽しかった」

 「そうでしたか」

 「はじめは、良かったと思った…」

 「はじめは?」

 「…ひどい。…ひどい人も、いるんですよね…」

 町を走っているとき、何人かの男性に、カメラを向けられたことがあったという。カメラは、何を、撮っていた?

 「甘かったと、思います」

 「甘かった?」

 カメラの向きに、違和感を覚えたことがあったという。

 「…カメラを向けていたグループから、変なひそひそ話が、聞こえてきちゃったんですよね」

 「…」

 「携帯で、仲間とかに、何かを話していた人もいました」

 「…」

 「ニヤニヤと、していました」

 「…」

 「ハナさん?」

 「はい」

 「たぶん、身体目当てで、撮られていました。女の子が、1人で町中を走るのは、危険なことだったのかもしれません」

 「盗撮…」

 「…そうです」

 気味が悪くなったその子は、1人で町中を走ることを、やめたという。

 部活動の中でしか、走れなくなった。

 「私ね…、ハナさん?」

 「はい」

 「部活動の皆で走れば良いんだと、思いました」

 「はい」

 「それなのに…」

 「何か、問題だったのですか?」

 部活動の中で、走った。

 そこまでは、何とかなった。

 校章付きの体操着姿の集団にカメラが向けられることは、完全ではないにしても、ほぼほぼ、なくなったという。

 「私…。安心、できていたのに…」

 「何が、あったのですか?」

 中体連など、公共の体育館を利用した競技がはじまると、雲ゆきが、怪しくなってきたという。

 「また、撮られていました…」

 「撮られていたって…?」

 「やっぱり、盗撮ですよ。ハナさん?」

 「盗撮…」

 しかし、それなら…。

 そう思いかけたところで、頭の回転が良さそうだったその子が、期待通りに、先手を打ってきた。

 「ハナさん?」

 「はい」

 「競技中とか、公の場での、アスリートにたいする動画撮影とかっていうのは、呼びかけで防げるって、思っていませんでした?」

 「…」

 「でもそんな対策は、もどかしいだけ」

 「…」

 なぜ、もどかしいと言えるのだろう?

 「ああ、そうか」




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