第13話 アスリートの盗撮問題って、知っていましたか?これに悩んで、介護負担を抱えちゃうような子も、いるんだよ?

 悩みを、打ち明けやすくしてあげたい。

 ヤングケアラーは、複雑。

 「いろいろと聞いちゃって、ごめんね?」

 「いいよ」

 「そっか。安心」

 「おれも、だれかに、きいてほしかったし…」

 「そっか」

 「ハナさん?」

 「はい」

 「今日は、ありがとうございました」

 「どう、いたしまして」

 「きて、良かったよ」

 「礼儀が、良いんですねえ」

 「おかあさん、いしゃ」

 「あ…そっか」

 「いつも、かんじゃとは、れいぎただしくしなさい、ちゃんとしゃべりなさいって、言ってた」

 「…良い心がけ、ですね」

 いろんな子が、ヤングケアラーになる。

 今度は…。

 「えっと…。ハナさん、でしたよね?」

 「はい」

 「あたし…」

 「はい」

 「中学生です」

 「はい」

 「相談が、あるんです」

 思いがけない困りごと、だった。

 次に、相談を持ちかけてきた子は…。

 中学校に通いながら、年の離れた親戚の兄を、介護していたらしい。

 ヤングケアラーの、もどかしさ…。

 「ハナさん?」

 「はい」

 「予想していなかった事態に、なりましたよ」

 「はい」

 「私こそ、介護してほしい」

 「はい?」

 「介護生活の疲れを癒すため、マラソンランナーとして走った時間の先に待っていたのは、盗撮でした」

 「はい?」

 回りくどそうな、言い方。

 一層のもどかしさを、感じた。

 「部活でね…」

 「部活、ですか?」

 その子は、中学校の陸上部に入ったのだという。

 ハナの、1学年後輩?

 もどかしさが、やわらいだ。

 …と思ったら、甘かった。

 「ハナさん?」

 「はい」

 「盗撮は、絶対に、やめるべきです!」

 何のこっちゃと、思わされた。

 「ヤングケアラーの生活で疲れる私は、部活を休むことも多かった。でも、でも、やっぱり、走ることが、好きだったんですよね」

 「はあ…?」

 部活を休んでまで家に帰り、誰かの介護をした場合…。

 「私が、やらなくっちゃいけない」

 真面目な子ほど、問題を抱え込んでいく。

 気合いが、入った。

 「これも、私と似ている…。部活動には入っても、実際、そこでは、活動できていないんだな」

 走ることが好きだったその子は、走りを、楽しめる…。

 はずだった…。



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