第5話 ハナによる相談が、スタート。弱い立場の子の心を開かせるには、どうしたら、良いんだろう?人の気持ちを、読む。想像力が、大切。

 「あの」

 「私は、マキハタヤマハナと、いいます」

 苦しむヤングケアラーの子を、救ってあげよう。

 この子に、話しかけてあげよう。

 話し相手がいるというのは、大きな救いになるはずなんだ。

 「…ハナさん?」

 「はい」

 「私…」

 「私に、何でも、話してみて?」

 「…」

 「お互いに、つらいからこそ、向き合おうよ」

 「お互いに?」

 「ええ。私だって、つらいんですよ?」

 この一言で、心が、開かれていった。

 「私…」

 「はい」

 「今は、お父さんと、2人だけで暮らしています。お父さん…、お母さんと、離婚しちゃったから…。父子家庭」

 「…」

 「…でも、ハナさん?」

 「はい」

 「私は、親がいるだけ、良かったと思います」

 「そうですか」

 「私の友達の中には、両親共にいなくて、子どもたちだけで暮らしている人も、いますから」

 「…」

 「子子家庭って、いうんですよね?」

 「…」

 「私、ぜいたくなのかな?」

 「そんなことは、ないと思いますよ?」

 「じゃあ、わがままなのかな?」

 「…」

 「私…。これから、どうなっちゃうんだろう…泣けてくる」

 「…」

 泣けてくるどころが、本当に、泣いていたようだ。

 父親は、精神疾患を患っていたという。

 その子が、役所の窓口まで、付き添った。

 その子は、窓口で、泣いてしまったという。

 職員には、社会福祉士免許保持者がいたらしい。その子が泣いてしまった状況を見て、どこかに連絡を入れた。

 「…泣かないで」

 「…うう」

 「ここまで、いけそうかな」

 「ここは…?」

 「児童相談所と、いうところです」

 「児童相談所…」

 「必ず、相談に乗ってくれますよ?」

 「…」

 「ごめんね」

 「…え?」

 「本当は、私も、いってあげたい。でも、できない」

 「…そうですか」

 「今、一緒にいっちゃうと、職場放棄になっちゃうのよ。だから、どうしても、できないのね」

 「職場放棄…」

 その子のほほに、また、涙がこぼれた。

 「ご、ごめんなさい!」

 職員には、すぐに、察しがついた。

 人の気持ちを、読む。

 想像力は、大切だ…。

 「しまった…。この子は、ヤングケアラーかな?職場放棄と言っちゃったから、休学とか休校、不登校を想像させてしまったかもしれない」

 つらい人の気持ちを想像することができれば、良いよね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る