第3話 ヤングケアラーの子たちは、このくらいの会話ができるくらいなら、まだ、平和?本当は、疲れていて眠かったんだけれど…。

 「だから、さ」

 「うん」

 「次の選択肢の中から、2階から目薬の言葉の意味を選びなさいっていうの、あったはずだよ」

 「ねえ、あったでしょ?ハナ?」

 「うーん…」

 「あったかい?」

 「うーん…」

 「ストラディバリウス!」

 「あ、高い!」

 「マフラーを、巻いてあげましょう」

 「あったかい…。って、そうじゃないか」

 「乗ったの、そっちじゃないの」

 「わかったよ」

 「わかったの?」

 「あ…、あった、あった。思い出した!」

 「安心、安心」

 「だね」

 友達に嫌われないよう、話を、合わせる。私のような中学生でもできる、処世術だった。

 「あった、あったよねー」

 「ハナ!良いぞ」

 「えへへ」

 「ようやく、思い出したか」

 「うん」

 「やったね、ハナ!」

 よく考えれば、何がやったなのか、頭が、グニャグニャのデロデロ。それで、良いんだろうけれど。

 「…で、何?」

 「ハナ?正解の選択肢って、覚えてる?」

 「そんなの、覚えていないけれど…」

 「思い出すんだ、ハナよ!」

 「なぜそこで、勇者なの?」

 「勇者の、呼吸!」

 「あ、思い出した!」

 「でかしたぞ、ハナ!」

 「もどかしいっていう選択肢、だったんじゃない?」

 「そ、そ」

 「だよね」

 「もどかしい」

 「うん」

 「選んだ?」

 「うん。選んだと思うよ」

 「でもそれ、おかしいから」

 「そうなんだっけ?」

 「しっかり、ターゲットに狙いを定めて、ピンポイントで、2階から1階に向けて垂らするとするじゃない…?」

 「…ターゲット、かあ」

 「当たれえ!みたいな」

 「何、それ?」

 「当たれえ、俺のかわいい、ファンネルたちよ!」

 「何、それ?」

 「わかんないけど、お兄ちゃんが、言ってた」

 「ふうん」

 「でさ、ハナ?」

 「うん」

 「ちゃんと、命中するって」

 「目薬、2階から、ちゃんとさせるの?」

 「らしい」

 「ふうん」

 「60%くらいは、成功したと思うよ?」

 「そうなの?」

 「もどかしく、ないよね?」

 「うん」

 「ハナ?」

 「何?」

 「ヤングケアラーと、どっちが、もどかしいの?」

 「わかんない」

 「社会に、正解はない」

 「特に、コロナ禍には、正解がないっぽいよね」

 「そんな感じですなあ、ハナ殿?」

 「うむ」

 本当は、疲れていて眠かったんだけれど、そうは、言えなかった。

 


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