第2話 ヤングケアラーは、「2階から、目薬」? 責任感で、追い詰められていく。「疲れたなんて、言えないよ。家族を支えるのは、私の義務…」

 ヤングケアラーの、やせ我慢…。

 「お母さん?ゆっくりしていて、良いんだよ?私が、何とか、やるから」

 私がやらなくっちゃ、ならないんだ…。

 「家族を支えるのは、私の義務なんだもん…」

 こうした責任感が、ヤングケアラーを、追い詰めていく。

 「疲れた。でも、弱音は吐けないよ」

 中学校の部活には、いけず。ブラスバンド部に入ってはいたけれど、活動はできなかった。

 「コロナ禍」

 「発表とか、できない」

 「コンクール会場も、作れない」

 クラリネットを吹くことは、叶わなかった。

 「あのクラリネットは、卒業までは、ハナのものだからね?練習しておいてね?コンクールも、控えているんだからさ」

 友達には、そう言われていたけれど…。

 「ハナ?がんばってね?」

 もう、がんばれないよ。

友達の言葉が、優しそうでいて、怖くなった。

 「ハナは、ヤングケアラーなんだって」

 「美談だね」

 「助け合いって、良いよね」

 「家族思いだね」

 そんなんじゃないよ。

 もどかしかった。

 もどかしかったのは、こんな言葉も。

 「2階から、目薬」

 目薬は、普通、手元で、さすものだ。それを、建物の2階とかから、下の階にいる誰かの目に向かって、液を垂らす。

 誰かの目に入れるだなんて、なかなか、できない。

 あれ?

 失敗。

 あ…。

 また、失敗した。

 「もどかしいなあ」

 そんな意味の言葉じゃあ、なかった?

 でもさ…。

 ちゃんと狙いを定めて、目薬の液を垂らせば…。

 思った以上に、上手くいくらしい!

 いつだったか、こんな話になった。

 「ねえ、ハナ?」

 「何?」

 「模試で、さ」

 「模試?」

 「たしか、2階から目薬っていう言葉の意味を聞かれたでしょう?」

 「2階から目薬の、意味?」

 「そ、そ」

 「ら、ら」

 「し、し」

 「ど、ど」

 「音階じゃ、ないから」

 「そっちが、言ったんじゃないの」

 「まあ、良いけど」

 「あ、折れた」

 「うん。折れた」

 「…そういう問題、あったかなあ?」

 「あったよ」

 「あったかなあ?」

 「あったはずだよ?」

 「あったかなあ?」

 「それしか、いってないし」

 「そんなこと、ないし」

 「あったかなあ?」

 「やっぱり、それしか、いってないし」

 「やっぱり、そんなこと、ないし」





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