ヤングケアラー・ハナは、奮闘中!①~がんばれとも言えないけれど、負けないで!家族以上に、女性アスリートの悩みも、ケアしてあげたい!~

@maetaka

第1話 ヤングケアラーは、うれしくない。「家族介護?」「家族の柱?」「へえ、鬼滅だね」「美談だね」ほめられても、うれしくないから。

 コロナ禍は、いや。

 ヤングケアラーと呼ばれる子は、責任感の闇を、無抵抗に、走らされていく。まるで、アンバランスな、夢幻列車のように。

 誰かの悩みを聞いてあげるのも、ヤングケアラーの仕事。

 疲れるよ…。

 助けようとすればするほど、自分自身が、つぶされそうになっていくんだ。

 眠りたい。

 …でも、眠れない。

 だから、アンバランスな、無限列車だっていうんだ。

 「ねえ、あの子」

 「あの子って?」

 「ハナの、ことよ」

「ああ」

 「ヤングケアラー、なんでしょ?」

 「大変みたいだよ?」

 「家族介護とか?」

 「がんばっているなあ」

 ほめられても、うれしくないよ。

「でも、私には、反論できない。この状況が、私自身で、わからない。私が、私を生かせない」

 私、マキハタヤマハナは、どうしたら良いの?

 「ヤングケアラー」

 それは、通学や仕事をしながら、障害や病気をもつ親や祖父母などを、介護する子のこと。

 年下の兄弟の世話も、する。

 たいていは、18歳未満の子が、ヤングケアラーと呼ばれる。

 ハナの家は、母親1人の柱によって、支えられていた感じだ。兄がいたが、あてになるんだか、ならないんだか?

 父親は、訳あって、今はいない。

 母親1人っきりのがんばりじゃあ、不安。

 あんまり、がんばらせたくないよ。

 疲れさせちゃうだけだし。

 ということで、私ハナが、母親の面倒を見ながら、家の柱となろうとしていた。

 「お父さん、帰ってこないかなあ…」

 父親のことは、嫌いじゃあ、なかった。だからこそ、いなくなってしまって、さみしかった。

 ただ…、嫌いじゃないけれど、無責任。

 こんなにも、残された私たち家族が、苦労しているっていうのに!

 私たちのおかあさんのこと、つまりは、妻のことを、どう思っているんだか。

 男って、無責任すぎだ。

 「ハナ、すごいね」

 「だね」

 「あの子が、柱になっているらしいよ?」

 「へえ、鬼滅だね」

 クラスメイトに、軽々しく言われた。

 さみしかった。

 ヤングケアラーには、言い返す力も、残ってなさそう。

 そりゃ…。

 ここで言い返して、つまらない力を使っちゃうのは、もったいないし。





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